劇場公開日 1978年10月7日

「仁義なき草野球」ダイナマイトどんどん neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 仁義なき草野球

2025年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

岡本喜八監督の『ダイナマイトどんどん』(1978年)は、質の高いコメディ映画だと思います。表向きは野球映画ですが、実際には「仁義なき戦い」をはじめとする東映実録ヤクザ路線のパロディに近く、菅原文太、北大路欣也、田中邦衛、金子信雄らおなじみの顔ぶれが揃うことで「東映映画」の匂いが濃厚に漂っています。

ただし、時代はすでに1978年。ヤクザ映画のブームは下火となり、観客の関心も角川映画など新しい潮流に移っていました。そのため、興行的には大きな成功には至らなかったようです。しかし映画そのものの出来はとても良く、岡本喜八らしいテンポ感や編集のセンスで、ただの二番煎じに終わらない娯楽性を持っています。シリアスな場面とコミカルな場面の落差が鮮やかで、ショット一つ一つもきちんと決まっており、軽妙ながらも職人技が光っています。

また、本作を語るうえでフランキー堺の存在は大きいと感じました。彼が登場することで作品に落ち着きや余裕が生まれ、東映的な荒々しさ一辺倒ではない、もう一段引き締まった空気が漂います。喜劇性とシリアスさを自在に行き来できる彼の演技が、この映画に奥行きを与えていました。

総じて、本作は「仁義なき戦いの残像をコメディに仕立て直した」ような一本で、同時代の雰囲気をよく伝えてくれる作品だと思いました。パロディとしての完成度は高く、興行的評価とは別に、今見返すと当時の空気を体感できる良質な娯楽映画として楽しめると思います。

鑑賞方法: U-NEXT

評価: 80点

neonrg
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