「まさに凶暴」その男、凶暴につき ラキムさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに凶暴
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日本映画専門チャンネルの北野武監督特集、北野武劇場にて久方ぶりに視聴。
本編終了後、浅草キッドのお二人とともに、芦川誠さんと、平泉成さんのインタビューも放送されたのだが、その中で、平泉成さんは北野監督について一言、「監督は言い訳の嫌いな人なのかもしれないね」と。つまり、監督は映画の中での設定をいちいち説明することを嫌うのだそう。これは、北野作品を好む人からすれば半ば常識なのかもしれないが、自分としてはこの一言はハッとさせられた。
自分が北野映画を好きな理由が、この説明の無さにあることに気が付かされた。北野監督は、水道橋博士いわく、いちいち裏設定をシーンにすることに対し、気恥ずかしさを感じるのだそう。
あくまで観客側の人間である自分からしてもそういったシーンは、もうそういうのいいからっていう気分になって一気に気持ちが萎えてしまう。
もともとの本、つまり野沢台本では、平泉成さんの扮する、岩城は不治病に冒されており、妻に少しでも金を残すために、手を汚したという設定があったのだそう。
このシーンを入れられたら、おそらく自分はこの作品にはハマらなかっただろうなと感じずにはいられない。
北野監督はこういう無駄なシーンをことごとく排しているのである。こういう北野監督の作品作りのスタンスが非常に魅力的である。このスタンスは今後の作品にも一貫していると感じる。
またシリアスな内容の中にも、笑いのエッセンスを加える、北野監督絶妙のバランス感覚をこの作品から感じられる。
「その男、凶暴につき」は、こういった北野武監督作品特有の雰囲気の源香を感じることができる傑作なのである。
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