「古臭い演出ではあるが、面白い物語」戦国自衛隊 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
古臭い演出ではあるが、面白い物語
総合:75点
ストーリー: 85
キャスト: 70
演出: 65
ビジュアル: 65
音楽: 60
角川映画は内容が薄っぺらいとかいう批判も多いし、その批判は必ずしもはずれとは言えないこともある。だが本作の物語はなかなかどうして面白い。
タイムスリップという異常事態に巻き込まれ、部隊隊員がそれぞれの意見を持って生き方を模索して行動していくさまがいい。秩序をなくし暴徒化し村を襲う者、なんとか現代に帰ろうとする者、この時代にささやかな幸せを見出す者、現代の知識と武力を使って戦国時代で天下獲りの野望を抱く者。
特に、元の時代に帰るためという表向きの理由を作って、この時代に一花咲かそうと隊員を戦闘に巻き込んでいく隊長の千葉真一と隊員たちの運命が見所となる。その中でも、武田との戦いはこの映画最大の山場。いかに現代の武器を持っていても、犠牲を厭わず襲い来る圧倒的な数の敵兵に次々に倒れていく自衛隊員。弾を撃ちつくし敵兵に囲まれ恐怖におののく姿。野望をぎらつかせる千葉真一の運命の結末は虚しいが、それも戦国という厳しい時代に自らを賭けた者の宿命と言える。もっとも、あれほどの戦いを生き残りながらも巻き込まれた隊員は迷惑だろうが、戦争とはそんなものだろう。
欠点も多い。銃や刀の効果音やBGMがやたらとしょぼかったりとか、飛んでくる弓矢や投げられた槍がへなへなで全然勢いがなかったりとか、影虎が城内で刀で人を切っても返り血ひとつ浴びないとか、映像に迫力がなくて時代を感じる。このような下手な演出は、当時の技術や背景では仕方がないのかもしれない。
配下の武将ではなく長尾影虎自らが危険を無視して先頭にたって敵に切り込んでいくとか、信玄が一騎打ちに応じるとかも納得がいかない。
そんなわけでそれなりに不満点も多い。どうせならば題名は似ているが内容が異なる「戦国自衛隊1549」ではなく、この物語そのままで新しい技術と演出で戦国自衛隊をリメイクして欲しかった。演出がよければずっといい点をつけられる。
あっさりと秩序をなくす隊員がいるが、軍隊といえどもほんの数十年前まで日常的に見られた光景であるし、現代でも国によってはよくある話。このような異常事態では充分有り得るだろうし、健全な隊員ばかりでないところが逆に生々しくていい。また劇中で「昭和の時代(平成ではなく)に戻れるほうに賭ける」という隊員の科白が時代を感じさせて少し可笑しい。そういえば昭和の映画だったんだと思い出させてくれる。