ゼロの焦点(1961)のレビュー・感想・評価
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橋本忍が松本清張原作を、より高い社会派タッチに引き上げるべく意図したのだろうが…
「鬼の筆」という橋本忍についての本が
あって、脚本化にあたり、
彼は原作本をちゃんと読まない
と記載されていた。
確かに、同じ原作者と監督同士の作品である
「砂の器」の脚本はかなり改変されている
が、その点において、
この「ゼロの焦点」は原作との乖離性は
まだ小さいように思える。多分に、
2つの作品の間には13年という時間の経緯
があり、
橋本忍に作風の自由を認められるだけの
実績が積み重なって、
より脚本家としての力量が発揮出来たのが、
後年の「砂の器」だった
のではないだろうか。
それでも、松本清張作品は
社会派推理小説と言われる中、
この映画は、橋本忍が、
より高い社会派タッチに引き上げるべく
意図したのか、
犯人の心境を加味したかのように、
かなりの改変を感じた。
しかし、前半の緊迫感に比べて、
中盤の3人の断崖のシーンでの
早々とした真相の明かしも含め、
後半はサスペンスとしての後退に繋がり、
面白みを欠いてしまった印象があった。
また、キャスティングなのだが、
主人公は夫に
「君は、若い身体をしているんだね」
と言われる台詞が出てくるが、
比較しているだろう能登の妻役の有馬稲子は
久我美子よりも実年齢でも年下で
作品の中でも若々しい印象なので、
橋本忍に責任があるのかは分からないが、
このキャスティング前提であったのなら
原作に倣うのでは無く
カットすべき台詞やシーンでは
なかったろうか。
ところで、曽根としての葬儀されたの場面
での棺桶の寺の卍マークが
ナチスの鉤十字のように
渦の向きが逆になっていたが、
単なるミステイクなのか、これで良いとする
理由が何かあるのだろうか。
さて、後年の橋本忍の円熟の脚本に加え、
芥川也寸志の音楽が名作誕生に大きく寄与
したであろう「砂の器」の再鑑賞が
楽しみになってきた。
モノクロの画面が醸し出す
戦後社会の裏を背景に描いた松本清張の代表作。
現代、良作の推理作品はたくさんあるが、戦後数十年の当時はかなり度肝を抜かれただろうと想像する。
主人公の禎子は髪にスカーフを巻き、スカートをなびかせて北陸の地を巡る。モノクロの映像が雰囲気を盛り立て、観ていると肩に風を感じるよう。
あれほど都合よく女の力で人を殺せるものかと思うが、登場人物の誰にも感情移入はできる。
昭和の女優さんは貫禄があって綺麗だな..とストーリーはもちろんのこと見応えがあった。
昔の出来事が曝かれる恐怖
戦後の暗部
ゼロの焦点と言うのは 推理小説として手がかりが全くない(ゼロの状態)から真相に迫るという意味や、登場人物の過去をゼロにしてやり直したいという切実な願いが焦点(核心)となっていることを示唆しているそうです。「砂の器」もそうでしたが社会派と呼ばれる作風の根底には常に重い過去との対峙がありますね。
事件の鍵は消息を絶った主人公の夫が昔、立川署の警察官だった時代のパンパン(戦後の日本で、米軍兵士を相手にした街娼)だった女性との関係ですが松本清張さんは当時、上石神井に住んでいた時、作品執筆の合間に近所の食堂へ出かけた際、立川の米軍基地の売春婦と思しき女性と出会い、彼女たちはその後どうしただろうか?と思いをめぐらしたところから本作の構想を膨らませていったそうです。
前半は謎解きミステリー風で前のめりになって観ていたが後半、真実が暴かれるにつれ、主人公を含め不幸な女性しか出てこないし、戦後の暗部にまつわる悲劇をテーマにしているので観ていて気が重かった。
砂の器につづく
早っ。原作を全部台詞で言いきるのが良い脚色とされた時代か?
☆☆☆★★★(最早、再現不可能な昭和の街並みと風俗描写に★1つオマ...
☆☆☆★★★(最早、再現不可能な昭和の街並みと風俗描写に★1つオマケで)
元祖2時間サスペンス。
本編の半分は崖の上での告白(^^)
よくよく考えてみたらこの構成。今ではもう目新しさは無いが、当時としたらかなり大胆な脚本だったのでは?…と。
原作は中学生時代に読了し、計3回は読んだかも知れない。
松本清張の原作推理小説は、『砂の器』もそうなのだが。戦後のドサクサに紛れ、成功を収めた人物が、自分の過去を知る人物をつい殺めてしまう弱い人間であり。その事による殺人の動機がしっかりと示されるところが、読んでいて納得が行く。
少しだけ
「全然◯が◯なかった!」
何回観てもついニャっとしてしまうなあ〜( ´Д`)
他にも、西村晃が◯される場面とラストの加藤嘉の全力疾走は大好きだわ〜(#^.^#)
今回再見して「おっ!」と思ったのは。オープニングの芥川也寸志の音楽が、後の『砂の器』でのメロディーで、幾つか再現されているのに気付いた事。
劇場鑑賞 日時・劇場名不明
2020年 9月1日 シネマブルースタジオ
リメイクされるのには訳がある
いま、観おわりました。
うーん、たまたまリメイク版を先に観ておりましたので、話の展開は分かりましたが、この旧版はあまりにもシナリオが荒削りでびっくり。粗雑な編集で混乱する時系列を、主人公の長台詞でなんとか解説。犯人も崖の上で延々と種明かしの自白をするとか。
こんなんで封切り当時の観客が満足したのか不思議です。
エスパー禎子=久我美子は活躍が過ぎて異様。まるで彼女、東京から捜査に入った警視庁の1課刑事です。(笑)
⇔ リメイク版の広末涼子のうろたえて何も出来ないくらいのほうが自然。
旧版の出来の悪さをリメイク版はそうとうに手直しして、まともにした。
ただ、有馬稲子!と高千穂ひづるの車中と、橋の上での身の上話シーン。そして能登の荒波を写すキャメラはこちらに軍配。
女優3人ばかりに焦点が当てられていて男性俳優はまったく魅力ゼロ。スタアを見るための“女優ブロマイド映画”ですね。
旧版65点、
新版90点といたします。
それにしても、
こんな大昔の映画を最近の日付で何人もレビューしているとか・・これも摩訶不思議現象です。(驚)
2時間サスペンスの原点のような映画
数ある2時間サスペンスのスタッフはロケや設定、編集技術をこの映画から吸収しているに違いないと思えるほどです。
ストーリーは難しくないし、犯人当てだって簡単。松本清張作品の中でも推理の醍醐味を味わう小説ではなかったと思いますし、それよりも犯人の過去やその過去にまつわる悲しい人生の登場人物をクローズアップした社会派作品です。戦争についての映像は一切出てこないのに、日本の敗戦によって悲惨な運命に翻弄される女性たちが日本海独特の暗さと重い空気に溶け込んでゆく。「戦後は終わった」と言われた昭和30年代にあっても、その暗い陰は人々の脳裏に根付いていたのです。過去を隠さねばならなかったというテーマは森村誠一の『人間の証明』にも通じますが、今の時代とは違い、犯人側の背負った重い運命にも涙せずにはいられませんでした。
舞台は金沢を中心とした石川県。今冬は久しぶりの豪雪となりましたが、45年前の豪雪の映像には驚きました。しかも主人公の女性(久我美子)はハイヒールで雪道を歩くという無鉄砲ぶり。「だから都会の女性は・・・」などとブツブツ言ってしまいそうになりましたが、彼女は新婚7日目。新郎は広告会社金沢支店所長という肩書きでしたが、「ブーツを忘れずに」との忠告もする暇がなかったのだと思われます。しかも夫が謎の失踪という災難に遭ったので、気が動転していたこともあったのでしょう。手掛かりを探すため、今は無き路面電車で寺町3丁目へ向かい、得意先の社長宅に到着する。社長の大邸宅は『野性の証明』と同じく成巽閣だ。そして、これも今は無き北陸鉄道能登線に乗って能登半島のヤセの断崖へ。荒れた冬の海から押し寄せる白波も印象的ですが、ラストシーンにも登場する断崖から見た日本海には、どんよりと曇った空から一条の光が差し込んでいるという絶妙のタイミングを狙った効果がありました。
事件の語り手のようでもある主演女優の久我美子よりも、高千穂ひづると有馬稲子がとても良かったです。特に、実はこれが真相だという回想シーンにおいて、有馬稲子の全てを許すかのような優しい目には泣けました。若き日の加藤嘉や西村晃も熱演しています。
しかし、雪が降らない太平洋側の人がこの映画を見ると「北陸には住みたくない!」と思うこと間違いありません。それほど暗いのです。これは雪国の人間が自虐的に楽しむ映画。そして暗さから脱却し明るい性格になろうとする再生のための映画なのかもしれません。
【2006年2月映画館にて(リバイバル)】
禎子の推定、警察の推定、佐知子の話等があり、芥川龍之介の「藪の中」...
砂の器の原形です
松本清張ものなら砂の器と本作を観ていなければ話になりません
久我美子 30歳
高千穂ひづる 31歳
有馬稲子 29歳
この3人で物語は展開します
終戦は中学卒業の年頃、戦後の混乱期に十代を過ごした女性達です
それがゼロです
そこに焦点があてられた時に本作の物語が始まります
とにかく久我美子が美しい!
153cm の小柄、少女のような骨格
小さな顔、知的な広い額、強い意志の眉、形のいい瞼と大きな目、頬骨から小さな顎にかけてのライン
しかし30歳、大人の女性としての落ち着きがあります
田中絹代の現代版と言うべき、芯の強さ、聡明さ、淑やかさを兼ね備えています
それが後半の説得力をもたらしているのです
役の禎子は26歳ですが、それを30歳の久我美子に配役していることが大成功しています
その彼女が中盤まで出突っ張りです
その美貌を曇らせて、雪の金沢や能登半島を寒げにスカーフを頭に被り、肩をすぼめて歩きまわる姿
それだけで中盤まで目を離せない磁力を発しています
能登の漁村で写真の家を見つけたときの、総毛立つ表情の演技と続く演出、カメラのズームはこちらまで総毛立ちました
終盤は高千穂ひづるがメインとなり、謎解きのパートを牽引します
彼女の大きな目がさらに大きく見開かれ、細い眉がつり上がるカットは見事です
有馬稲子は脇役に過ぎませんが、高千穂ひづるを引き立てる役として良い仕事をしています
終盤の謎解きの舞台は断崖絶壁です
2時間ドラマのこのシーンは本作にルーツがあります
金沢
劇中は夜汽車で行く、遠い遠い北国の街です
それが今では東京から僅か2時間半!
昨年季節の良い頃に乗ってあまりの速さに仰天しました
金沢駅もまた近代的に産まれ変わっていて、街中も大きく都会に変貌しておりこれまた仰天しました
それでもちょっと繁華街を外れると中心部からすぐ近くなのに京都よりも日本情緒溢れる街並みがまだまだ残されていました
この金沢と能登半島の旅情、画面の迫力が本作を名作たらしめているもう一人の主演俳優だと思います
それを芥川也寸志の素晴らしい音楽が盛り上げてくれます
監督は野村芳太郎
脚本は橋本忍です
原作は松本清張
音楽は芥川也寸志
遠い地方の光景
この布陣何か思い出しません?
そう、本作は砂の器の原形とも言うべき映画なのです
砂の器には本作との相似形をいくつも感じ取れるはずです
砂の器のゼロの焦点が本作なのです
松本清張の小説は面白い・・
「ゼロの焦点」を観て・・
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