劇場公開日 1964年2月15日

「人間の個としての独立 人間社会の個の封じ込めと個の埋没 その不条理 それでは陳腐かもしれません でもそうとしか表現出来ません」砂の女 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間の個としての独立 人間社会の個の封じ込めと個の埋没 その不条理 それでは陳腐かもしれません でもそうとしか表現出来ません

2023年1月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

人間は犬じゃない
鎖をつなぐわけにはいかないよ

1964年公開、白黒作品
原作は安部公房の1962年の小説
川端康成の次に日本人でノーベル文学賞をとるのは彼であろうと目された作家でした

作風は本当に難解
本作と同じく何が何だか皆目わからない
本作はその原作が難解そのまま映像となっていて、その難解さを忠実に映画化したと言えます

なぜなのか訳もわからず蟻地獄のようなところに閉じ込められ生活することを強要される物語
逃げようとするのだがどう足掻いても逃げられない

家庭生活というものはそんなものだ
文字通り砂を噛むような単調な毎日
そこから逃げて出そうとしてもどうにもならない
いつしかあきらめてそこに安住している自分を発見する
単にそのような底の浅い物語のようにも思える
しかし、その程度の幼稚な内容ではないし、そんなものを書くような原作者ではないともわかっている

ところで
プリズナーNo.6というイギリスのテレビドラマをあなたはご存知でしょうか?
伝説のカルト作品です
日本では最初1969年にNHKで放送されました
以後民放などアチコチで再放送されました
放映当時まだ子供でしたが、訳も分からないくせに何かしらとても惹きつけられて夜遅い時間帯なのに夢中で毎回視ていました
本作はそれと似ています

あるいはジョージ・オーウェル「1984年」にも似ているかも知れない

その「プリズナーNo.6」は一見、スパイもの
辞表を上司に叩きつけたばかりの元イギリス情報局員が拉致されて、外界から隔離された不思議な村に閉じ込められ何故辞めたのかをしきりに問われるが主人公は絶対に口を割らず、毎回隙を見て村からの脱出を試みるという物語

これも東西冷戦を背景にした共産圏の管理社会の当てこすりのようで、そんな程度のそこの浅いものではなかったのです

人間の個としての独立
人間社会の個の封じ込めと個の埋没
その不条理

簡単に言えばそんなところなのでしょうか?
それでは陳腐かもしれません
でもそうとしか表現出来ません

プリズナ-No.6はそこに安住するならば快適な村
砂の女の家は、絶えず不快な砂まみれ
表裏一体です

本作もそういう作品なのだと思います

あき240