「画面の奥行きが素晴らしい」新・平家物語 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
画面の奥行きが素晴らしい
京の街を行き交う人々の数、強訴に来た比叡山の法師たちの数。いずれもおびただしい人数を出演させている。驚くのは数のレベルではない。画面の隅々、手前から奥に、この大人数を注意深く配置することで、観る者に3D顔負けの奥行きを体感させる。
屋内のシーンでも同様の注意深さは発揮されていて、被写体の後方は屋外へと空間が広がり、その先に小さな人物が複数映っているのだ。
このような奥行きある画面を作ることで、観客はいま観ている世界が無限に続くいているリアリティにひき込まれる。スタジオやロケ地といった有限の空間を観客に意識させることなく、現実世界と同様、視線のその先がどこまでも続いている視覚を生み出しているのだ。
また、セットも素晴らしい。考証的な視点からどう批判されるのかはさておき、忠盛邸の様子は院政期の武士の館はさもあらんと思わせる。大勢の家の子・郎党を招き入れることの出来る広さはあるものの、建物の作りは粗末であり、華美とは程遠い。
市川雷蔵の清新な青年清盛役もなかなか爽やかでよかった。木暮実千代の母親役のどうしようもなく身持ちの悪い女との対比で、より潔癖な人物像が作り上げられている。
他の主演作における雷蔵の女たらしぶりと比べると笑えるくらいである。
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