新日本暴行暗黒史 復讐鬼のレビュー・感想・評価
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みんなぶっ殺して、こんな世界なんてぶっ壊せえ~
結核は感染症であるという事が既に分かっている時代でも、「あそこは肺病の家系だ」と村八分にされ酷く虐げられて来た男が怨念を爆発させ、村人一人一人を日本刀で切り殺して行くお話です。戦前の1938年、岡山県で起きた「津山三十人殺し」事件を基にしているとされています。
これは腹に堪える物語でした。忠臣蔵の「刃傷松の廊下」の様に、これまでの屈辱に耐えに耐えて来た男が遂に唸りを上げて刀を振るい始めると、彼の刀に僕の思いも完全に憑依して、
「ぶっ殺せ、みんなぶっ殺して、こんな世界なんてぶっ壊せえぇ~」
と拳を握りしめてしまうのでした。物語を書いた人、撮った人、演じる人の様々な恨みがフィルムの一コマ一コマに焼き付けられていました。
ただ、気になる事。本作は実際の事件を基にしているとはいえ、あくまでフィクションなのですが、事件名に村の名を付けられた土地に暮らす人々は一体どの様な思いでこの映画を観たのでしょう。また、現在の当地の人々はこれをどう観るのでしょうか。
そして、もう一つ。この時代の若松映画はピンク映画の体裁を取っているので、性暴力のシーンがしばしば当たり前の様に出て来ます。しかし、本作冒頭の暴行シーンは男の僕が観ていても辛かったです。それほどに「迫真の演技」或いは「良く撮れていた」という事でしょうし、「女優魂」「熱演」と評価されるのかも知れませんが、そうした見方自体が現在では再検証を求められているのでしょうね。
"村八分"
復讐モノ西部劇な雰囲気、物悲しげな音楽と冷たく廃れた映像にやり切れない物語。
序盤から核となる出来事が、観ている側も一瞬で村人たちに憎悪を浴びせる視線で鑑賞、復讐に手を染める姿は哀しみに満ちているが、殺される村人たちに同情の余地は無く。
いわれのない風評で孤立無援な立場に陥った兄と妹が、部落の人々から理不尽極まりない暴力の被害者に。
最後まで救いのない物語が被害者から加害者になってしまう理由、実話である"津山事件"を参考に描かれた本作、今現在何ら変わらない出来事が起きてもおかしくはない。
若松孝二が描く"ジャパニーズ・ウェスタン"ってジャンル決定版!?
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