人生とんぼ返り(1955)のレビュー・感想・評価
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日本映画の持つ悲哀、忘れかけていたやるせなさが心の奥底から甦る物語
新しい演劇への情熱、立ち回りに情熱を傾けた男とその妻の物語。
妻役の山田五十鈴の細かい仕草は分かりやすく、どこを取っても夫への深い愛情を感じる。一方、仕事一筋とはいえ、心の中では妻ただひとりと、森繁久彌の演じる男の悲哀感も素晴らしい。また2人の姿を見続けた(娘)きくの揺れる思いが最後になって物語を大きく動かす。
監督はマキノ雅弘。リメイク作品として脚色し、所々に夫婦、家族、使命としての仕事の要素を強く取り入れ、観る人に日本のあるべき姿を残した。特に人の細かい情や位置の演出には、強さと優しさが滲み出ている。人物を生かす構図も上手い。
物語の動く後半…、有る出来事から病床での長い場面に差し掛かる。両者のその思いの深さに涙し、その後 託した舞台に再び涙、父への思いにまた涙と、ただただ涙が続く。
マキの監督の映画は初めてかもしれないが、心に重いものを乗せてくる何とも言えない「シャシン」を作る監督だと強く思った。
物語はお盆の京都で終わる。
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