「私にも、ギラギラした思い出ばつくって!」その後の仁義なき戦い mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
私にも、ギラギラした思い出ばつくって!
「その後」とあり「仁義なき戦い」の後日談のような印象を受け(製作側はまさに二匹目のどじょう狙いではあるが)、損をしているが、まったくこの作品単体で、素晴しい作品である。
監督は、深作から、当時TV映画「傷だらけの天使」「祭ばやしが聞こえる」「必殺」シリーズ等でシャープな映像で評判になっていた工藤栄一。
三角マークに馴染みのない根津甚八を主役に(当初はショーケンが主演の予定だった)、当時異色だった宇崎竜童、松崎しげるが出演。音楽が柳ジョージと、今までの東映色とは違った工藤栄一らしいスタイリッシュな映像と音楽の作品になった(ただし、クレジットタイトルは相変わらずバカでかい文字で白ける)。当時高校生だった私は、東映がはじめて若者の感覚の映画を作ったと喜んだものである。
「仁義なき戦い」シリーズとは、まったく繋がりがないが、おなじみの組織の抗争に翻弄される若者という構図のみが継承されている。権謀術数を使った親分同士のやり取りよりも、その犠牲になる若者たちに焦点をしぼり、裏切り、裏切れながらも、何かを引きずって生きる若者を描く。
路面を濡らして光を反射させる手法や、逆光を多用した撮影は、今ではTVドラマでも当たり前の手法だが、当時は斬新で、工藤栄一は「光と影の魔術師」といわれた。
「私にも、ギラギラした思い出ばつくって!」
この言葉は、前半、根津と出会った原田美枝子が一夜をともにするときに言った台詞。この原田の切ない台詞が、ラストの原田の姿に重なる。ラスト近く、根津甚八がホテルのベッドで拳銃を構えるシーンから、柳ジョージの「Hevy day」(なんと日本語!)が流れ、歌をバックに銃撃戦を暗示する光の光芒が挿入され、原田美枝子が「カツアゲ」するラストシーンまでのシークエンスは秀逸。原田の透きとおるような美しさ。
工藤栄一監督の後期の作品中ベストだと思う。