「ラストカットがあそこだからこそ」新幹線大爆破(1975) 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストカットがあそこだからこそ
トークショー付き上映にて初鑑賞。
トークショーの感想。
樋口真嗣監督がかなり熱心に話していた。
樋口真嗣監督は小学校4年の時に学校サボってまで観に行き、それ以来ずっと好きで何度も観ている。ついにはネットフリックス版の監督になっている。
今日は公開からちょうど50年目の超メモリアルデー。
当時借りるだけでも100万するカメラでミニチュアを撮影している。新幹線の場面はほぼミニチュアとセット。新幹線の中の撮影が当時の国鉄から許可がおりなかった為、新幹線の部品を作っている下請けの工場から部品を調達して組み立てて新幹線内の正確なセットを作った。あまりに出来がよく、その後の他の東映作品でもこのセットが使われている。
という感じの内容に加えて「このシーンに出てきたこの俳優は別の何とかという作品に出ていて〜」というマニアックな話をしていた。その情熱はすごいと感じた。
ついついマニアックなことを話したがる監督をうまく翻訳して、うまく仕切り切り替える笠井アナの司会進行の上手さに脱帽。プロのアナウンサーで映画好きであることも知ってたけど改めて生で進行の巧みさを観ると感動があった。
映画の感想
これ、本当に結構大作映画だったんだな。なんかネタみたいな感じで語られるイメージがあった。正直、確かに面白シーンはある。新幹線の走り方に明らかなミニチュア感があるところ、大騒ぎな客、都合よく通りかかる柔道部員達。ただ、それら全てを含めて面白い。
特に印象に残るのは犯人側のストーリー。ラストカットは犯人チームのリーダーだった高倉健が撃たれて倒れる場面で終わる。ああ、ここなんだと。
新幹線を無事に停車させやったー!と皆が喜ぶ。そこで終わりでもいいのにそうはしない。
指揮をとっていた宇津井健は客の命を危険にさらしたことに責任を感じて辞表を申し出る。
さらにその後、高倉健が逃げきれるか?という空港のシーンが割とある。元妻と子供が張り込みに使われて!逃げる高倉健!飛び立つ飛行機を見て追うも!警察に撃たれて倒れて幕切れ。
この「かつては善良な工場の人だった男が事業に失敗し完全犯罪を企てるも仲間もろとも死ぬ」物語をこの題材でやったところに意義があるのだろう。
犯人が撃たれて倒れる場面をラストカットに持ってくるとは思わなかった。あそこをラストカットにしたから今作の印象が良くなったまである。
作中における運転手や新幹線スタッフの頑張り。降ろしてくれ!と叫ぶ乗客。やたら豪華なキャスト。ミニチュアと新幹線の車内のセットの気合いの入り方。見どころはひたすらある作品。