「とびとびの物語だが、周囲の人物の演技が良い」次郎物語(1987) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
とびとびの物語だが、周囲の人物の演技が良い
総合:70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:75点|音楽:60点 )
原作は下村湖人の同名小説で、小学生か中学生のころに読んだが当時はあまりはまらずよく覚えていない。この作品も若いころに観たが、やはりそれほど面白いと思った記憶はない。久々の鑑賞で年齢を重ねてみるとどう思うか。
結果的には昔観た時よりもずっと良いと思えた。病弱の母と乳母との人間関係があった複雑な少年時代を過ごした少年の姿が、昔の日本の美しいのどかな風景を背景にして綴られていた。
乳母・母・祖母・父親など、登場人物の演技はしっかりとしていて良かった。泉ピン子の演技はやはり上手いし、実母の高橋惠子の儚い美しさも印象に残る。物わかりの良い父親加藤剛と、この時代の名家出身らしい傲慢な祖母大塚道子も上手い。
日本の昔の風景の撮影にはこだわりをもって撮影されていて、美術も良く出来ていた。
だが短い作品の中に長い原作を無理やり押し込んだために、どうしても物語はとびとびで内容が薄い。主人公の葛藤が十分に描写されてはいないし、問題が起きてもあっさりと収まってしまう。最後は少し成長した主人公が登場して終わるが、これは続編を意識していたのだろうか。
さだまさしの音楽はスメタナのモルダウを基にしているのだが、どうもこの旋律を聞くとモルダウの印象が強くてこの明治時代日本の話とは合っていないように思える。
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