劇場公開日 1966年10月15日

「橋本忍の技量に感服した」白い巨塔(1966) KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0橋本忍の技量に感服した

2022年1月1日
PCから投稿

原作を読もうと本を購入したのだが100ページくらいで断念した。説明が長すぎストーリーが面白くなさすぎた。あの分厚い小説を全部読んで面白いとこだけをギュッと凝縮し取捨選択してエンターテインメントなシナリオにまとめあげたのは見事だ。ほぼ得票工作の話なのだが非常に面白い。脚本家の技量が特に優れていると感じるのは主人公がどっからどう見ても感情移入できないタイプの男だという点だろう。普通こういう主人公だと観客はいやになって興味を失ってしまう。ところがこの作品ではそういう奴を描いておきながら見るものを惹きつけてしまった。脚本家、橋本忍のやはり世界一の脚本家だ・・いや脚色家かな。
演出は脚本に沿っており脇役が変に目立つことを避けるようにしている。エロもバイオレンスもなく会話だけの映画なのに見ごたえのあるものに仕上げたのは監督の力であろう。すべてが成功した作品だと思う。原作のファンにとっては物足りない部分はあっただろうが原作を読んでない私からすると文句の言いようのない傑作だ。
ついでに書いておくと手塚治虫の傑作、「きりひと讃歌」はこの作品に似ているという評価を受けている。実は私はそれが気になってこの作品を映画で見てみたのだ。確かに主たるテーマは同じだと思った。この映画のこういうところをもっとを膨らましてデフォルメして描けば更にもっと面白くなるのに・・・というのが「きりひと讃歌」では描かれている。そして結末もまた異なっている。それもまた漫画の歴史に残るような傑作なのでこれを見て面白かった人は「きりひと讃歌」もぜひ読まれたい。

タンバラライ