「傑作!」昭和残侠伝 死んで貰います U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
傑作!
バランスがいい!
健さん、池部さん、富司さんと…このフロントラインに集中してるような感じだ。
それまではサイドストーリー的なキャラがいたように思うのだが、今回は見事に集約してた。
今作では、過去から連なる因縁みたいなものも描かれる。今の状況は良い事も悪い事も、過去の自分がした事から派生していると分かりやすい形で示される。
その縁に救われる秀次郎。
その縁に苛まれる秀次郎。
とても見易い構成だった。
もうここまで見てくると、高倉健って人柄が見えてくるように錯覚する。
この「花田秀次郎」ってのは作られたキャラのはずなのに作為が全く見えてこない。
池部さんには仮面が見えたりするんだけど…健さんにはそれを感じない。
「ぼっちゃん」って気さくに話しかける所作にも、郁太郎に袖を引かれ出て行く様も、仏壇に火を灯す視線とか、長門さんとのやり取りとか…ホントに素晴らしい。
また富司さんが今世紀最大にいじらしい!見てるコッチが照れちゃうんだけど、もうホントにたまらなく可愛い。
雨に濡れた着物を拭けよと健さんが差し出す手拭いでいの1番に健さんの着物を拭いてあげるとか…その後に寄り添うのだけれども、胸に顔を埋める訳ではなく、背中で寄っかかったりするのだ。
健さんの代わりに私の腕を切ってと出てこられた日にゃあ…敵わんわ。
それだけじゃなく、もう全ての仕草が艶っぽい。なのだが、好いた人の前ではあどけなく可愛いらしいのだ。芸者っていう役柄もあるのだろうけど、まぁ見事。…可憐だ。
そして長門さんが、まぁ達者!
ある意味、健さんを喰いかねない程魅力的なのだ。見てて気持ちがいい。
このお2人は、芝居に一切嫌味がない。
顔立ちからして曇りがない。
津川さんはお坊ちゃんって感じがすんだけど、長門さんは江戸っ子気質でヤンチャだったんだろうなぁと思われる。
ややこしい事情はあるものの、実家に身を寄せる秀次郎。だけど、秀次郎の過去はどこまでもついてくる。
それ故、実家に迷惑がかかり、どこまでいってもヤクザはヤクザと傷心する秀次郎。
その秀次郎にかける重吉の言葉は重い。
彼は先代に引き取られた時に、同じような葛藤を乗り越えた過去がある。
「やってもらいます」
あんたなら出来るとは言わない。やってもらうと撥ねつける。その一言への覚悟が溢れかえっていて胸が熱くなる。
ラストの殴りこみは健在で、道行はまたも2人なのだけれど、健さんが池部さんを先に行かすのよ…何も台詞はないんだけど、その仕草に色んなものが含まれてるようで、粋な演出だなぁと嬉しくなる。
その前に助太刀をかって出た長門さんも素敵だったし、送り出した富司さんも素敵だった。
止むに止まれぬ渡世の事情。
結局はそんなとこに縛られるのだけれど、その事情を飲み込むからこそ、相手に詫びる気持ちだとか気遣う強さとか…そんなものがラストに色濃く出てくる展開で素晴らしかった。