昭和残侠伝 唐獅子牡丹のレビュー・感想・評価
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パラレルワールド
メインキャストがほぼ変わらず、続編なのかと思っていたら、全く違う話だった。
シリーズ2作目らしいのだが、すでに熟成された人気シリーズのような風格が漂う。
今回もまた重厚な物語であった。
「渡世の義理」に苛まれる秀次郎の心情が痛いほど伝わってくる。
もう脚本に一切の淀みがなくて、お手本というか、教本というか…語るべき方向に全くのブレがない。また三田さんが儚げで…恋慕を募らせていく様がいじらしい。
絶対にこの人は傷つくのだ。
亭主を殺した男が秀次郎なのだから。
そして秀次郎はそれを黙っている男ではないのだから。
切った張ったの世界で男のケジメみたいなもののサイドストーリー的に展開される男と女の話が、メインストーリーを分厚くさせるというか…古典の戯曲となんら遜色のない本だった。
そして、途中から出てくる圭吾がまた、おいしい所を外さない。
彼もまた「渡世の義理」を深く理解する1人だったのだろう。
もう、なんだろ?
渡世の義理も仁侠も、全く縁の無い人生だし、理解できないし、その内訳すらも分からない。この映画が公開された時代に生まれてた訳でもない。仁侠映画のファンでもない。
なのだが、ものの見事に主人公達に寄り添えちゃう。初見なんだけど、面白いと思えちゃう。一体何が俺に訴えかけてるのだろうか?
にしても…高倉健さんの台詞回しときたら、絶妙に上手い。
声の距離感を履き違えないというか…他に何を説明しなくても、その距離感だけで対象をどのように感じているのかまで想像できちゃう。
実に巧妙なのである。
何か技巧を凝らしてる風でもない。目の前にいる人に向き合ってる感じが凄くする。
伏せっている八重を介抱するのだけれど、傍にまで寄らないのだ。
この位置が表現するのは秀次郎の実直さだ。監督が指示したのか高倉さんが選んだのか…カメラマンとしては、もっと近くにと注文をつけそうなもんだ。
繊細な演出が随所に溢れ心地いい。
後これはホントにどおでもいいのだけど、ラストがとある作品にダブって、その映画は結構な影響力を及ぼしていたのかなあとクスっと笑う。
「シェーン」である。
西部劇的なパーツがそおいえばいくつかあったなぁと、石切場で青空バックに刀を握りしめる秀次郎を思いだす。
微妙に違和感を感じた取り合わせだった。
ラス殺陣が前作より格段に進化してた。
殺陣師でも変わったのだろうか?
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