十九歳の地図のレビュー・感想・評価
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新聞配達青年の闇を描く
観た感想は小説から受ける印象とたいして変わり映えしなかった。 街を駆ける犬の精神で鬱屈して怒りと暴力衝動をうちに秘めた青年を描いた内容
かさぶたのマリアは中上の同人誌時代の同志の小林美代子女子をモデルにしたと思われる。それと当時中上が影響下にあったWフォークナーから考えたと思われる地図がやがて路地になり紀州サーガ三部作に繋がる分岐点となった小説である。
中上が羽田で肉体労働をしながら書き上げたまだ荒削りな時代の小説で作者の当時抱えたものは一気に吐き出したような内容だが映画そこまでではない感じ。
かさぶたのマリアの描き方がちょっと違うと感じた。
原作を超えるものが特になかった感じ。あとエロシーンは原作にはない。
原作は中上の処女作品「十八歳」に似た感じのやりきれない悲しみと甘ったるい青春を唾棄する切迫した衝動みたいなものが描かれている。映画はそこがいまいちでかさぶたのマリアが浮いてしまった感じがした。
柳町のデビュー作。
こう言う話好きです
世の中バツだらけ
手の込んだ陰湿なストレス発散、解消法が生き甲斐のように、暴走族の素人が素朴に思える雰囲気を醸し出しながら垣間見れる狂気性を炸裂させる一歩手前、下手な演技でも演じていなくてもメチャクチャな存在感が魅力的な本間優二、関わりたくない面倒な臭気をプンプンに漂わせながら憎めない蟹江敬三がプロの役者として作品を成立させているような。
新聞配達の過酷さが伝わってくる、まるで日本のスラム街のように人々が当たり前に生活している底辺の沼から抜け出せない麻痺した感覚が、それを象徴しているマリアの痛々しい行動全てに恐怖を感じてしまう。
事は起こさずにこのまま鬱屈した気持ちを抱えながら普通に結婚したりして生活する吉岡を想像すると尚更に怖さが増してくる。
こういう映画は今や作れないよね
もう数十年にもなるだろうか?
多感な学生時代に薄暗い小劇場(確か文芸地下だったと思う)で一人、悶々と肩をすぼめて観て以来、たまたまアマゾンプライムサーフして観てしまいました。
「しまいました」というのは、私の場合、この手の映画を見るには、結構「気合」がいるわけで観終わったあともその気分をひきずってしまうからなのです。
あの時は、どうしようもない、暗鬱とした、救われない気持ちで劇場を後にして、街をあてもなく彷徨った記憶があるんだけど今回、感性も鈍化してしまって、ある意味、残りの生に対して諦観みたいなものも持ち始めた年代になって観てみると当時のインパクトは感じなかったですね。
ただ、描かれている同年代の鬱屈は、逆にリアルに解るし、映画の中に描かれてた荒涼とした風景は今の私の中で吹きさらし始めたのかもしれない・・
蟹江敬三がジョーカーのホアキン・フェニックスのようで素晴らしかった!
それぞれの、心の闇
1979年の作品を、2021年に観た。
キャンディーズの「春一番」が流れている。
舞台の東京都北区王子には「王子スラム」との一画が存在してる。
主人公吉岡が自作の地図にそう記していたので。
人々はまだ「新聞をとること」を当たり前にしている時代の物語だ。
吉岡は世間に参入できない。
屈折した批評家のポジションで世を斬りまくる。
新聞配達の自分にカステラを振る舞ってくれる家族にも「偽善者」とのレッテルを貼って。
どうやら性的に問題を抱えているようで(不能者なのか非異性愛者なのかは不明)
それが彼の心の闇の源泉のようである。
周囲の者たちもまた、みなそれぞれに闇を抱えて生きている。
闇を飼いならしたり、闇から逃げようとしても失敗したり、それぞれだが、
皆「なんとか生きていく」ことで折り合いをつけている。
吉岡19才、この先闇と折り合いをつけて生きていくのか。いかないのか。
透徹したリアリズム
金がないから体で払う?
いつも吠えられていた犬を軒下にぶら下げる。脅迫まがいのイタズラ電話。鬱憤をはらすためとはいえ、鬱屈した19歳。同じく住み込みで働く紺野(蟹江)に誘われ、女子高生に声をかける。彼は“かさぶただらけのマリア様”と崇める情婦(沖山)とときどき寝ているのだが、彼女の男は紺野だけではない。脚に大きな傷があるマリアはビルの8階から飛び降り自殺を図ったことがあるという。
吉岡は新聞仲間からも“童貞”だと蔑まれたりして、予備校にもまともに通ってない。新聞配達員が低く見られることから鬱屈はつのり、イタズラ電話もエスカレートする。地図作りも手の込んだものとなっていくのだ・・・
そんな折、借金まみれの紺野は八百屋に押し入り、強盗犯として逮捕される。中途半端な刺青をしている紺野に対し行為を抱いていた吉岡はマリアを責める。
リアルな新聞青年の姿。牛乳を盗むのは当たり前のことのように描かれているが、こんな映画を見せられると、新聞奨学生にならなくてよかったとホッとしてしまう。年代を見ても、同じ世代だもん。それにしても、単に嫌がらせされただけでなく、親切にお茶を出してくれる家庭であっても“偽善者”として×印をつけてゆく吉岡。鬱屈しすぎ・・・
タクシー運転手(柳家小三治)が「最後に拾った女が金がないから体で払うと言って、いただいちゃったよ」と言ってた。GPSのついてる現代じゃありえない話。あったら、即クビ。
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