十一人の侍のレビュー・感想・評価
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クライマックスの死闘は、時代劇を沢山観て来た方でもこれほどの迫力の殺陣の連続は他にあまり無いと思われるとお約束できます
十一人の侍
1967年12月公開
東映白黒作品
主演夏八木勲
監督工藤栄一
音楽伊福部昭
素晴らしい!傑作です
題名とお話が若干似ている「13人の刺客」と混同されやすいです
そちらの作品は1963年12月公開
(2010年公開の方は三池崇史監督のリメイク版)
東映白黒作品です
監督も同じ工藤栄一
主演は片岡千恵蔵
本作の原型はその作品と思います
もしかしたら、監督はリメイクのつもりだったのかも知れません
本作は基本、忠臣蔵です
ごくごくシンプルです
ところが13人の刺客の方は、もう少し設定が凝っています
本作でいえば、老中の側が暗殺の首謀者となるという筋書きでお話が複雑になります
その分、単純な勧善懲悪のカタルシスが削がれているのではないかその反省から本作の企画が出発しているかのように感じられます
冒頭から悪役の非道さを簡潔に見せて観客に感情移入しやすくして、展開も余計なことは削いで削いで気持ち良い程シンプルに徹しています
ただ女性二人の扱いが頑張ったものの結局、今一つだったところは唯一の残念なところです
本作のクライマックスは二段仕立てです
襲撃直前のシーン
勝手に動くものは斬る!
命令に背くものは斬る!
圧巻中の圧巻です
周到に準備を重ね、成功の可能性が極めて高い!
そして、そこからの怒涛の急展開
私達観客はスクリーンに釘付けとなり茫然となって死闘を見守るのみとなります
猛雨の中の追撃、簡単な手順の打ち合わせのみでの急襲、死闘につぐ死闘
雨が上がった時、全てがおわり観客にも大きなカタルシスが訪れます
時代劇を沢山観て来た方でもこれほどの迫力の殺陣の連続は他にあまり無いと思われるとお約束できます
音楽はあのゴジラの伊福部昭
クライマックスの劇伴はまるでゴジラが暴れまわっているかのようなものですが、劇展開はその音楽が決して仰々しいとは思えない程の迫力で釣り合っています
音楽も13人の刺客は伊福部昭でしたが、本作でも素晴らしいマッチ具合でした
本作に満足されたなら、その13人の刺客(1963年版)も是非ご覧になられて下さい
強くお勧めします
ラストの土砂降りのなかでの両軍の対決は『七人の侍』と比べても遜色無し
新文芸坐さんにて「『十一人の賊軍』公開記念 東映集団抗争時代劇の系譜」と題した特集上映開催(2024年10月7日~10月15日)。
本日は『十三人の刺客』(1963)、『忍者狩り』(1964)、『十一人の侍』(1967)の3作品を一気見。
『十一人の侍』(1967)
『十三人の刺客』から4年後、前作がリアリズムに徹して、あくまでも集団時代劇として描かれてましたが、本作品は、登場人物一人ひとりの背景などにフォーカスを当て、より感情移入できる作品になりましたね。やはり本作でも白眉なのは松平斉厚役の菅貫太郎氏。『十三人の刺客』よりもさらに残忍酷薄な馬鹿殿をファーストカットから演じて、一気に観客の反感と憎しみを買うのはお見事でしたね。そして、本作でも西村晃氏の剣豪ぶりが素敵でした。佐藤慶氏の水野越前守も面目躍如、これ以上ない冷徹な悪を演じてましたね。
ラストの土砂降りのなかでの両軍の対決は『七人の侍』と比べても遜色なく、さらにリアルに泥臭く、本作品の方が敵側のキャラクターも描かれていたので熱が入りましたね。
殺陣は十三人の刺客に負けてない。
なるほど
惜しむらくは薄暗い白黒映像
総合:80点
ストーリー: 80
キャスト: 75
演出: 85
ビジュアル: 60
音楽: 65
不条理をまかり通す傲慢な江戸幕府に対して、武士のしての本分を命懸けで通す者たちの姿を力強く描いていた。自ら火の上に乗ってわが身を焼きながら自分の義務を全うするなど迫力もあった。単に戦闘の壮絶さや自分の死だけでなく、自分の人生を捨て家族を犠牲にするなどといった背景まで踏み込んでいて、たとえ目的を達成したとしても残る悲惨さも描いていたことに共感が持てた。
だが多数の人々が出てきて、彼らを認識するのが簡単ではなく、誰が誰だったかを覚えるのがたいへん。そしてその原因の一つは薄暗い白黒映像。顔がはっきりと見え辛い。特に戦闘場面になって遠目の撮影になると、最早個々の区別は困難。一応敵は笠をつけて定型の衣装をつけて識別しやすいようになってはいるものの、敵と味方との区別すら混戦の中ではわかりづらいし、まして味方の中の区別はつきにくい。これが現代の天然色でくっきりと撮影されていたならば随分と違っただろうと思うと、とても惜しい。
こちらのリメイクも検討してほしい
工藤栄一監督の「集団時代劇アクション三部作」で、「十三人の刺客」と「大殺陣」は見ていたのだが、「十一人の侍」だけはなぜか見る機会がなかった。それが、今、旧東映直営館で行われている東映時代劇特集企画でようやく見ることができた。新宿バルトさんに深く感謝!、です。
本作は、長年、心に高めていた期待感を少しも裏切らない、見事な快作だった。「十三人...」は組織的な暗殺計画、「大殺陣」は時代が呼んだテロという見どころがあったが、この「十一人...」は徳川という威厳への挑戦と反抗というところが随所に描かれているのが、とても興味深かった。集団時代劇におけるドラマの側面には、仇討ちモノというのが定番だが、この作品も一種の仇討ちでありながら、徳川側の陰険なやり口などでそこにたどり着けないもどかしさ、というのが丹念に描かれているのは、さすが名匠・工藤栄一監督、とうならされた。
ラスト三十分近くの集団チャンバラアクションは、他の二本と同じく、凄惨さはすさまじいものだった。ただ、他と違ったラストシーンにちょっと爽快さが感じられたのは、この作品ならではだろう。「十三人の刺客」がリメイクされるらしいが、「十一人の侍」もぜひ、ハリウッドでもいいからリメイクしてもらいたい、と思う。
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