劇場公開日 1986年4月19日

「本作はいわばジャズ初心者の為の教科書です」ジャズ大名 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本作はいわばジャズ初心者の為の教科書です

2020年7月30日
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鑑賞方法:DVD/BD

ジャズが好きなら傑作
でなければよくわからない映画かも知れませんが
それでも楽しく見れるはずです

本作はいわばジャズ初心者の為の教科書です
南北戦争による奴隷解放がジャズの誕生に繋がっていること
場所はニュオーリンズであること
それが全米各地に飛び火して広がったこと
強烈にスイングする音楽は人種も思想も超えて、人間共通の躍動する生命の賛歌であり、人生を謳歌するものだということ

正にジャズ誕生の瞬間は明治維新の頃であるところに目をつけて、幕末の物語にしてそれを展開しています

そしてジャズの音楽の特徴を説明します
ひとつの旋律を基に、各人が感情の赴くまま自由気ままに好きに気が済むまで演奏する
それが即興演奏(インプロビゼーション)です

その即興がリズムと旋律を共有しながらうねりを見せる
それがスイングです

この二つ成り立ちの過程を城内の慶応年間のジャムセッションとして観せてくれるのです

つまり本作を観るだけで、ジャズの起源と誕生年代、インプロビゼーションとスイングの成立の過程と意義を自然に理解することができると言うわけなのです

終盤、江戸に向けて進軍していく薩長軍を裃をつけて堅苦しく出迎えようとする家老は、過ぎ去っていくならもう呼び止めはせず、裃を脱いでスイングに興じます
それも彼が使うのは山鹿流の陣太鼓
赤穂浪士の大石内蔵助も打ち鳴らした戦いのためのドラムです
彼はそれをタムタムにしてジャムセッションに加わって没入します
正に武器を楽器に変えたのです

奴隷解放にも似て、堅苦しい江戸時代は終わったのです

封建時代は終わった!
新時代が訪れたのだ!人間性の回復の時代だ!

それがええじゃないかの集団が乱入するラストシーンの意味です
即ちジャズとは人間性回復の喜びの音楽なのです
原作を超えた映画ならでは演出の効果でした

本作でジャズの魅力に目覚める人が一人でも増えたら本作は成功していると言えるのです

和楽器でのジャズの可能性に興味を持たれたなら、LAの日系人フュージョンバンドのヒロシマをお勧めします
本作ではあまりうまくジャムセッションにのっていない琴の音も、このバンドは上手くアレンジして活かしています
1979年の1st から、本作の公開翌年の1987年辺りまでの5枚は、本作を楽しく観られた方には是非ともお聴き頂きたいと思います

あき240