「夏目雅子は、猫のような風貌と雰囲気を持っている得難い女優なのです 他にはいない彼女だけの唯一無二の存在なのです」時代屋の女房 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
夏目雅子は、猫のような風貌と雰囲気を持っている得難い女優なのです 他にはいない彼女だけの唯一無二の存在なのです
なんか個人的なツボにハマってしまいました
正直そんな大したことはない映画と思います
でもやっぱり星5つつけてしまう
なぜだかとても染み入る映画なんです
夏目雅子
彼女の個性が最も引き出せている映画だとおもいます
彼女の美しい姿を追い求めているなら、本作が一番満足のいく映画だと思います
調べてみると身長164cm 体重50kg B86 W58 H88とありました
この数字全然サバをよんでないことが良く分かります
細く華奢で、すらりと長い手足、青白いほどの白い肌、細くて長めの首と小さな顔、切れ長の大きな目
彼女が映っているだけで映画になるんです
でも大井町なんて良く知っている下町が舞台なものだから、こんな美しい女性が本当にこの世の中に実在するんだという感覚が、観る側の私達に生じるのです
その感覚が映画の中のお話と妙に絡みあって、なんとも説明のできない感情が巻き起こってくるのです
今風にいえば、とてもエモイのです
夏目雅子は、真弓と美郷の一人二役
二人はそれぞれ全く関係がない人物なのだから、別々の役者で良いはず
でも監督は夏目雅子にどちらも演じさせています
安さんにとっては、同じだからです
猫のように迷いこんで、去っていく女なのです
夏目雅子は、この猫のような風貌と雰囲気を持っている得難い女優なのです
他にはいない彼女だけの唯一無二の存在なのです
大井町は、京浜東北線にのって品川の次の駅
大昔から個人的な思い出が色々とある街なものですから、商店街や街並みの風景がチラリと映るだけで、その記憶が鮮やかに蘇ってしまいます
何度となく写る三ツ又地蔵尊は大井町駅西口から400メートルほどのところ
駅前ロータリーから商店街を抜けてほんのすぐです
らせん階段が特徴的な歩道橋は、池上通りの大井三ツ叉交差点に掛かるものです
あの歩道橋を彼女が傘を差して渡って来たということは、多分駅から来たわけではないのでしょう
時代屋は映画のセットではなく撮影当時この場所に実在していて、そこで撮影されたそうです
今は跡形も無くなってしまっています
何もかも変わっているようでもあり、なにも変わっていないようでもあります
今井クリーニング店は、新幹線の高い高架の下を走る横須賀線の踏切のすぐそばで、東急の下神明駅から西大井駅方向に少し行った辺りですね
みんなが揃う居酒屋のシーンも染み入ります
品川区の地元民が集まる居酒屋はあんな雰囲気なんです
まるで自分が通っていたお店のようなんです
そんな街に、夏目雅子が歩いている!
もうそれだけで胸が一杯になるのです
灰色の薄汚れたゴミゴミと建て込んだ下町の光景が、夢の中のバラ色の世界になるのです
猫のような女が実在しているんだと
でも猫のような女は、理想のようで実は大変なんです
プチ・ファムファタルなのです
男の心をかき乱す存在になるのは間違いありません
1983年の3月の公開
いまから約40年昔の大井町の姿
時代屋の名前のとおり、映画の中の町並み自体が古物になってしまってしまいました
夏目雅子も、渡瀬恒彦も、津川雅彦も、沖田浩之も、朝丘雪路も、森崎東監督まで、みんな鬼籍に入ってしまいました
人も街も、思い出も、みんな時代屋に並べられた古物みたいになってしまったのです
劇中であんこう鍋を用意しながら真弓がこんなことをいいます
「私達ってやさしいのかしら?それとも残酷なのかな?
「だってさ人に使われて静かに死のうとしているものを、無理やり生き返らせてもう一度人に使わせるものにしちゃうわけでしょう」
「安さんが優しくって、私が残酷なのかな?」
もちろん彼女のこの台詞は、自殺しようとした青年と、彼を立ち直らせようと努力している自分のことを言ってます
ですが、この映画を公開から約40年後の21世紀に観た時、違う意味に聞こえてくるのです
40年も昔の、人と街並みと、思い出なんて、時代屋に並べられた過ぎった時代のもうどうでいいガラクタみたいなものだと
そんな風に昔の記憶を蘇らせる映画を観るなんて
トランクからでてきた切符みたいな記憶を蘇えらせることと同じなのよと
だって36年ぶりに再会したところで、杖をついた腰の曲がった白髪のおばあちゃんの姿なのですから
今井さんにはさぞ残酷だったでしょう
そうしてそれよりも、連絡を受けていそいそとホームまで迎えに来たのに、ひと目見て愕然として帰えられてしまったおばあちゃんへの今井さんの仕打ちの方がもっともっと残酷なのです
やさしいのかな?それとも残酷なのかな?
あの台詞は、自分にはそんな意味に聞こえたのです
それでも、自分はやさしいのだと思うのです
だって映画の中は時代が止まっているのですから
いつまでも思い出のそのままなのです
ふと考えてみれば、この大井町駅の二つ先の蒲田駅は、大昔松竹蒲田撮影所のあったところです
あの♪虹の都 光の港 キネマの天地~の歌のところです
蒲田からは、池上通りをまっすぐ北に1 時間ほど歩くとこの時代屋の脇の歩道橋にぶち当たるのです
真弓は映画の中の幻影の女だったのかも知れません
真弓は傘を差して、空に近い高い歩道橋を渡って時代屋にやってくるのです
メリー・ポピンズみたいに
本作の併映はリバイバルと言っても僅か5ヵ月前に公開されたばかりの「蒲田行進曲」でした
なんなんでしょう?不思議なことです
あき240さん、こんにちは。大井町が舞台なんですね。レビューを拝読して、記憶がかなり曖昧なことがわかりました。仰るようにみんな鬼籍に入られてしまいましたね。死のこと最近よく考えます。自分が死んじゃう前にもう一度この映画見ようと思います。