劇場公開日 1978年6月3日

「女優魂・大竹しのぶの渾身の演技」事件 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0女優魂・大竹しのぶの渾身の演技

2025年2月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

姉妹で一人の恋人を奪い合うような、情熱的な恋愛は、若い人たちだけの特権とも言うべきだと、評論子は思います。
評論子のように馬齢を重ねてしまったような「大人」から見れば、たとえ無軌道にも破天荒にも映ったとしても。

宏を情熱的に愛するハツ子と、静かに愛するヨシ子―。
彼女たちが実の姉妹であったかどうかはさておくとしても、姉妹でありながら、水と油とのように全く違った「愛し方」が、不幸な事件へと発展してゆく様(さま)は、観ていても胸が痛くなりそうな程でした。

後記のような、大竹しのぶの女優として渾身の演技もあり、「現代の不安な青春の姿を描く」という本作に対する映画.comのコメントは、正鵠を射ているというべきでしょう。

充分な佳作だったと、評論子は思います。

(追記)
周囲の荒波に揉(も)まれても、静かに、そしてその静かさゆえに深く宏を愛するヨシ子の姿は、胸に迫ります。

彼女の柔和な表情の中に…もとい、外見的には柔和な表情であるが故に、彼女の内心に秘められた宏へのおもいが、熱波のように、画面から伝わるようにも思われます。

加えて。
男性である評論子には妊娠の経験はもちろんないのですけれども。

評論子が入っている映画サークルの女性先輩会員に言わせると、ラストシーンにほど近く、お腹に宏の子を宿したヨシ子を演じた大竹しのぶの歩き方は、まさに「妊婦の歩き方」だったのだそうです。

もちろん、撮影のために妊娠したわけでもなく、演技であることは間違いがないのですが、彼女のその役作りの芸の細かさも、分かる人には分かる一本でもあったようです。

(追記)
それにしても、菊池弁護士の弁護ぶりは、堂に入ったものでした。
いわゆる「組」関係の仕事を多く手がけている先生を除いて、普通の弁護士さんは、刑事事件は、あまり得手ではないはず。
こうまで堂々と公判部検事と渡り合えるということは、ひょっとして菊池弁護士は、いわゆる「ヤメ検」(検察官を辞めて弁護士登録をした弁護士)という設定だったのかも知れないと、密(ひそ)かに思いながら観ていました。

菊池弁護士にやり込められて(公判部の)岡部検事が(検察捜査を担当した)刑事部の検事にボヤくシーンは、噴飯ものだったとも思います。

talkie
PR U-NEXTで本編を観る