劇場公開日 1998年11月14日

「彼女への憧れの想いだけを抱いて亡くなって、むしろ…」時雨の記 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0彼女への憧れの想いだけを抱いて亡くなって、むしろ…

2023年1月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

女は土産をいきなり開けたり、
男は生け花の花瓶をいきなり手にしたりと、
二人の所作が気になる作品だったが、

そんなことはさて置き、
吉永小百合目当てオンリーで鑑賞。

若い頃より美しく感じる彼女だが、
この作品での50代の彼女も同じ印象だった。

しかし、そんな邪な目当ても
吹き飛ぶような鑑賞になってしまった、
内容が身につまされるものだったから。

誰よりも愛する家族がいるものの、
しかし、
昔憧れだった女性に数十年ぶりに出会い、
心穏やかにはいられなくなったため、
吉永小百合に彼女の印象を
オーバーラップさせながらの鑑賞
となってしまった。

ただ、自分が渡哲也には
ならないだろうと思うのは、
“縁”を大切に思うから。
かつて憧れだった女性との再会も
“縁”ではあるだろう。
しかし、時間の長さが異なる。
その長い時間に責任もある。

私は亡くなるまで、
その憧れの彼女への想いを
悶々と残すだろうが、
それ以上に妻や家族を大切に想うだろう。

「シェルブールの雨傘」のラストシーンに感動
するのは、過去の女性への想いを断ち切り、
現在の“縁”を選択する男性の想いだ。

遠くにいる人は、その良い面しか見えない。
ある意味、渡哲也は彼女への
憧れの想いだけを抱いて亡くなって、
むしろ幸せだったのではないだろうか。

KENZO一級建築士事務所