仕掛人梅安のレビュー・感想・評価
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役者・伊丹十三の本領
萬屋錦之介主演の東映版仕掛人。
劇場公開時、評価も興行成績も芳しくなかったように聞くが、原因の一つは錦之介が梅安を演じたことへの違和感にあったと思う。
当時は大ヒットしたTVシリーズ『必殺仕掛人』の記憶未だ覚めやらぬ時期。緒形拳演じる若くて精力的な梅安像と、当時五十歳手前の錦之介のイメージが重ならないのも無理からぬこと。
とはいえ、原作小説で梅安が若いなどとは一言も言及されていない。
『必殺仕掛人』には登場しなかった相棒、彦次郎の設定が四十過ぎなので錦之介が梅安をやっても不自然ではない。
ただ、自分の認識する錦之介の後期代表作は拝一刀を演じたTVシリーズ『子連れ狼』と柳生宗矩を怪演した『柳生一族の陰謀』(1978)。どちらも凄味が特徴だったが、本作の達観した梅安にはその凄味が欠けていたように感じる。
撮影は本作が劇場作品最後の仕事となった宮島義男。大映の宮川一夫と並び称される存在の筈なのに、本作の、特に前半、カメラワークに精彩が見られない。
渡辺茂樹のBGMもチープだし、細部の演出にも安易さが散見出来る。
監督の降旗康男は東宝での『駅 STATION』(1981)の監督が決まっている中、スケジュールをこじ開けるようにしてわずか20日ほどで本作を撮了。いい映画が出来る訳がない。
映画では斜陽でも、TV時代劇の雄として君臨し続けた東映の傲りが本作では露呈したような気がする。
彦次郎役は錦之介の実弟、中村嘉葎雄(仲いい兄弟だなあ。この二人だったら『影武者』だって成功してたかも)。
旗本の放蕩息子、主税之助を演じたのは昨年他界した中尾彬。『本陣殺人事件』(1975)の金田一耕助なんて珍品もあるが、この人には毒々しい悪役が似合う。悪口ではなく、そんな役もこなせる俳優がいないと映画もドラマも成立しないということ。
元締・音羽屋半右衛門を演じた藤田進も適役。
子供の頃、伊丹十三はすでにマルチタレントのような存在で、その後映画監督として活躍したため、俳優としての演技を意識して観る機会は本作がおそらく初めて。
彼の演じる近江屋佐兵衛は明らかに主役の梅安を喰っているように見える。伊丹十三の役者としての本領発揮、錦之介が今回出せなかった彼の凄味が本作最大の見所といえる。
BS日テレにて鑑賞。
伊丹十三の悪役は良く似合う
メインテーマ、聞いたことあるぞ。 いろんな人が演じているんですね、...
二番かな
トヨエツ版の梅安を観てから、原作を
(どうしても読まねばならぬ…)
と思い、ただ今、寸暇を惜しんで読書中。
なんと、文庫7巻で絶筆、未完。
ああ、池波先生、なぜ死んでしまったの。
ということで、自分としてはかなり盛り上がった時に、萬屋錦之介版を観られ、BS日テレさんには感謝。けっこう萬屋錦之介も原作のイメージに近い。黄八丈に黒の羽織、頭巾姿がはまっている。鍼治療シーンがあり、表の顔も描かれ、どぎついラブシーンはない。人情味がある梅安であった。
仕掛については、元ネタである「闇の大川橋」と別の部分を加え、派手にしている。仕掛鍼も存在感があり、彦次郎の吹き矢もなかなか大きい。橋の上からのジャンプ、かっこよかった。
近江屋の髪色が白いが、裸の体はそれほど老いてない。伊丹十三はなんかギラギラしちゃってるな。しかし、倒錯の近江屋兄妹を使うより、主税之介の悪行をもっと出して欲しかった。なんか小者感が拭えない。小杉十五郎が若くてさわやか。おもんも艶があってよい。お咲はきれいだと思ってたら、真行寺君枝か。つるつるピカピカやないかー。彦次郎はヤニがかった雰囲気で、ちとダークさが濃いな。梅安はやはり私の中ではトヨエツが一位、錦之介は二位かな。だんだん緒形拳は遠のいてきた。
BS日テレ 特選時代劇の放送にて。
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