「座頭市対片腕唐人剣士」新座頭市・破れ!唐人剣 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
座頭市対片腕唐人剣士
シリーズ22作目。1971年の作品。
市は絶命寸前の唐人から幼い息子を託される。日本に来て間もない謎の片腕唐人剣士・王とも出会い、二人を福龍寺に連れて行く事になるのだが…。
毎回ビッグスターや名優をゲストやライバルに招いてきたが、本作では遂に海外スターを招待。
香港のアクション・スター、ジミー・ウォング。『片腕必殺剣』『片腕ドラゴン』などで大ヒットを飛ばし、“天皇巨星”と呼ばれるほど人気を誇った。
そんなジミー・ウォングが片腕剣士という当たり役を彷彿させる役を演じる。ハンディキャップを負いながらも滅法強いというキャラは、何処か座頭市に通じる。
座頭市シリーズ22作目でもあるが、片腕必殺剣シリーズ3作目にも当たるという。言うなれば、クロスオーバー。本当に作品と作品、垣根を越えた。
何と言っても見所は、日本の大スターと香港のアクション・スターの“共演”と“対決”。
二人のやり取り、市は王の言葉が分からない。王は市の言葉が分からない。
一応日本語が分かる幼い子供の片言の通訳があれば何とか成り立つものの、それ以外は全く。
市の台詞、「同じ人間で言葉が分からねぇっておかしなもんだ」。
でも、そこが非常にリアルである。こういう時代、『ラストサムライ』みたいに都合よく言葉が分かる人物など居ない。
それがまたラストシーンに響いてくる。
『座頭市と用心棒』は“対決”と呼ぶにはいささか物足りなかったが、本作はたっぷりと。
クライマックス、剣を交える事になる二人。
超人的な身のこなしで襲い来る王。
防戦、苦戦の市。
傷付き合いながらも、激しい闘い。
シリーズ後期でも屈指の一戦だろう。
激闘の末、勝ったのは…?
(尚本作、日本バージョンと香港バージョンがあり、微妙に作風やクライマックスの勝者が違うという)
ドラマ面も悪くなかった。
異国の者同士のコミュニケーション。
唐人狩りが執拗に追い、途中市らは親切な一家に一晩世話になる。
が、ここで悲劇が起こった事から…。
誤解、裏切り、不条理、闘わなくて良かった闘いを…。
もし、言葉が通じていたら…。