「なんと山本薩夫!!」座頭市牢破り kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
なんと山本薩夫!!
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念願の独立プロ・勝プロを設立した勝新太郎の第一回作品。監督には社会派監督として名高い山本薩夫で、座頭市シリーズ3回目の宮川一夫の撮影。ちょっと紛らわしいのが、前作の親分同様、富蔵親分を遠藤辰雄が演じている・・・
序盤から登場する刀を持たない侍・大原秋穂(鈴木瑞穂)が浮いているような気もするが、百姓に収穫のイロハを教えている姿も面白い。その大原がやがて農民の心をとらえ、いなくてはならない存在となってゆく。そして新たに十手預かりとなった朝五郎(三國)の手によって、謀反の疑いありとして囚われの身となるのだ。尊皇派という疑いだったが、どちらかというと天照大神を信仰する自然主義者。そんな彼の基本は非暴力。市と正反対だ。
この作品の面白さは、善と悪が環境次第で移り変わるものだという点。三國演ずる朝五郎も最初はたとえ博打ですった者であろうが百姓のために出す金を惜しまず、座頭市も思わず惚れこんで任侠道に活路を見出したりする。市が富蔵をやっつけた後、半年くらいで豹変。また、市にしても富蔵に雇われた百姓を斬ってしまったり、片腕を切られた仁三郎(細川俊之)の恋人・志乃(浜田ゆう子)も女郎に貶められたりと、人は常に変わってゆく様を描く。もっとも訴えたいのが、権力者に近づいてしまうと、その権力におぼれるということだろう。皮肉なことに非暴力の大原が暴力的な市に助けられるというのも・・・大地を汚してしまったな・・・
三國連太郎はこの頃から咳をするのが上手かった。
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