劇場公開日 1963年11月1日

「佐久間良子の魅力と京都の遊郭のまち並み、そして悲劇。」五番町夕霧楼(1963) M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0佐久間良子の魅力と京都の遊郭のまち並み、そして悲劇。

2023年2月15日
PCから投稿

水上勉の原作の映画ならば見なければ。
金閣寺放火事件を題材とした同名の小説のようで、原作は読んでいないが実際の映画の展開もそれを思わせる内容であった。

佐久間良子が登場する最初の純真さから京都の遊郭でだんだんとこなれてきて、エロティシズムを出す所がこの映画の売りどころかと思われる。店を仕切る女将の木暮実千代はとても凛とし、度胸・貫禄があった。

後半、変貌する佐久間良子と若い男性の登場。水上勉のトーンだろうか、そこから物語にいっきに暗い影が覆いかぶさる。少し、性急な展開と結末である気もするが、佐久間良子の物事を隠さない誠実さが心を打つ。人の心の奥底にある残虐さと、そのことで一人の人間がどん底までに追い詰められてしまう因果。一方、他の誰もが避けるが純粋に支えようとするもう一人の人間の苦悩。この小説・映画のテーマであるように思う。

ところどころに、新聞記事が出くる。サンフランシスコ講和条約など戦後の占領下から、徐々に日本の自治や売春についての法整備などの会話や組合の話しが出てくる。最後の方のクライマックスも新聞報道が情報を知らせてくれる。そういう時代を反映した社会性のある映画であった。

京都では遊郭があったと思われる歴史保存地区だろうかとても雰囲気のあるまち並みがスクリーンに映し出されてとても見入ってしまった。
水上勉が福井県大飯郡本郷村生まれとのことで、丹波の辺りでロケしたのだろうか。日本海の荒波に洗われた岩と海辺の家々、急斜面に立つ墓。そして主人公佐久間良子のふるさと。そのふるさとの映像はいつまでも子供の頃の純真な思い出を思い起こさせる。

広島市映像文化ライブラリー

コメントする
M.Joe