GONINのレビュー・感想・評価
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どついて切られて撃たれる映画
 劇画家出身の石井監督だけあって、絵面は言う事ありませんが、こういうのって思わせぶりの始まり方が多いですね…劇場で観ていたらケツが痛くなっていたと思う。
万代と三屋の結びつきを提示したいんだろうけど、万代の土下座シーンから始めても構わないような…さっさと人間関係と状況の説明
してくれよと思うんだ。
内容自体はシンプルな話なんだから、もっとサクサク進めて動的なシーンを多く入れたほうが〈これから何か事が起こりそうな雰囲気〉や〈喪失した者への余韻〉が活きるんじゃなかろうか。
作り手が描きたいものをたっぷり描いてしまうと、その思い入れが全体を重くしてしまう。作り手は浸っているから満足だろうが、受け手は知らないものをいきなり渡される訳で…重いものばかりだと辟易して離れたくなるのよ。
じゃ、共有できる観客だけ相手にすれば良いのなら、もう商業作品では無いわな。
本作が興業より、レンタル始まってから評価されたのはわかる気がする。
 ただ、一番イカれてるのが萩原というのが面白い。憎めないオヤジと思わせといて〈本当にヤバい奴〉という。
映画は絵
①竹中直人が帰宅するシーンでの家族の死体の撮り方
②根津甚八の家族がレストランの駐車場で撃たれる時のカメラワーク
③土砂降りの中、本木雅弘がヤクザ組事務所に突っ込んでいくシーンのカット割り
④根津甚八を撃ち殺す時のビートたけしを映すカメラの動き
傑作映画という噂を聞いた初見の方は映画全体の脚本と構成の緩さで「そうでもない」と思ってしまう人もいると思う。しかしあくまで「映画は絵」。心に残る凄いシーンがあればそれだけでいい。上記した場面に代表されるワンカット、ワンショットの記憶に残る迫力と凄まじいまでのカッコ良さは、邦画における「ゴッドファーザー」と言っても過言ではない後世に残すべき名画。
ちなみに、この映画のせいで「エリーゼのために」は今に至るまで恐怖の音楽となった。
オープニングだけで割と満足できる映画
包み隠さずそのまんまな「男たちの挽歌」(86年)のオマージュから始まる本作ですが、「男たちの挽歌」が観る者の心を熱く奮い立たせる作品であるのに対して、本作は観る者の心を冷たく震えさせるのです。
ブルセラ、援交、オヤジ狩り…コギャルにチーマー、サリン事件…ノーパンしゃぶしゃぶ汚職事件!と、当時は電車で数時間かければ東京へ日帰りできる距離の田舎に住んでいた私ですが、深夜の情報番組などでそれらのルポを見ては、東京とは怖ろしい所だとビビり散らかしていたのです。渋谷になど行こうものなら秒で身包み剥がされポアされると思っていたのでよほどの事がない限り行きませんでした。
しかし田舎には田舎で半歩時代遅れのヤンキーがそこかしこにおり、靴流通センターで買ったダンロップの運動靴を履いているのはダサい事なのでは?と薄々感じはじめても、AirMaxやポンプフューリーなどのハイテクスニーカーを履いてウッカリ目を付けられようものならどんなヤキを入れられるか分かったものではないので、コンバースオールスターかナイキのナイロンコルテッツを愛用していた私。というかそもそもスニーカーに数万円なんて到底出せなかったのですが、それでもAirMaxを履いて学校にくる子は居た訳で、そんな子のAirMaxは盗難にあったりAirの部分に穴を開けられパンクしていたりと…、まだまだ世間知らずな鼻たれではあったものの酷く人心が荒んでいるのを肌身で感じていたあの頃……。
本作がAirMax狩りを描いた映画という訳では全然ないのですが、私が上記のような物事を通して感じていたピリついて暗澹たる空気が漂っていた平成初期の日本。そのくせ音楽やビデオゲーム業界、プロレス・格闘技興行は隆盛を極めていましたが、その景気の良さにもどこかヤケクソ気味の虚勢の臭いがしたあの時代……。
映画はタイムカプセルの様な物だとよく言いますが、この作品にはそんなあの頃の日本の雰囲気が真空保存されているのです。
巨額の借金を背負い暴力団事務所から現金強奪を企てるディスコ店オーナーの佐藤浩市。佐藤浩市を強請ろうと近づいてくる妖艶な本木雅弘。リストラされた事を家族に打ち明けられぬまま街をさまよう元サラリーマンの竹中直人。金髪パンチドランカーの椎名桔平。自身の汚職で妻子含め全てを失い、ボッタくりスナックの用心棒に身をやつす元刑事の根津甚八―。
根津甚八は惜しくも平成28年(2016年)に亡くなられてしまいましたが、今もなお活躍を続ける俳優たちの30年前の姿が確認できるのも本作の見所なのです。
暴力団組長の永島敏行に若頭の鶴見辰吾などはそれまで演じてきた役のイメージとはかけ離れた役を演じている訳ですが、そのハマり具合は怖いくらいです。特に『首でも吊るか?あ?足引っ張ってやっぞ…?』と佐藤浩市を恫喝する鶴見辰吾の静かな迫力は、これがかつて山田太一脚本の名作ドラマ「早春スケッチブック」(83年)で大学受験を間近に控えた気弱で繊細な少年を演じていたあの子なのか?と、その変貌ぶりと時の流れの残酷さに涙が出るのです。
そして現金強奪を成功させた佐藤浩市たちを追う殺し屋の ビートたけし と 木村一八。特にビートたけしは映画公開の前年である平成6年(1994年)に、あの原付事故を起こした後で、片方の目にはガーゼが貼り付けられたままなのです。そしてそれが演じる役の異常性と不気味さを際立たせる小道具として十二分に機能しています。他にも本当にチョイ役ですが室田日出男、不破万作、栗山千明などを確認できる本作。
物語の筋立て自体はありがちで単純であり、登場人物たちに映画本編で描かれていること以前にどの様な経緯があったのかなどは断片的な情報でなんとなく察する程度にしか描かれていません。そのくせ殺し屋の ビートたけし の過去だけはトンでもないシチュエーションで朗々と語られるのですが、まぁ普通の人はあまり感情移入できないであろう登場人物たちによる陰惨な物語を淡々と眺めさせられる映画です。
そんな観客との間に冷たい距離を置く作品であるにもかかわらず、この映画の登場人物たちは観る者に強烈な印象を残すのです。
この人物はこういう性格ですというような事を言葉で語らない分、多少記号的でわかり易く誇張された感じではあるのですが、それを演じる役者たちは実に様になって格好良く、その存在感には説得力と迫力があります。これ程冷たく陰惨な物語なのに、何故か格好いい雰囲気のある映画なのですが、それはやはり演者の力量と魅力、そしてそれを遺憾なく引き出した監督の手腕に因るところが大きのだと思うのです。
そして本作のメインテーマがまた秀逸で、このメインテーマをバックに始まるオープニングがこれまたいいのです。この良さは2回目以降の鑑賞で本領を発揮すると思うのですが、この曲にのってキャストが次々クレジットさていくだけで私の心の中では歓声が湧き起こります。オープニングでキャストがクレジットされるだけでほぼ絶頂を迎えてしまう作品は、私の場合は他にNHK版の向田邦子脚本ドラマ「阿修羅のごとく」(79~80)があるのですが、この両作品のオープニングで流れる楽曲は改めて並べてみるとなんとなく似ていますね。まぁそれはともかく、オープニングのクレジットだけで割と満足できてしまうのも当然作品の良さがあってこそ。
何を分かり切った事を…と思う方も多いとは思うのですが、日本にもいい役者が沢山いるなぁと映画の雰囲気とはかけ離れて、ほのぼのとそんな感想を抱いてしまう。そんな映画なのです。
最高のバイオレンス映画
なんかすごいメンバーなんだけど・・・
日本ノワールの金字塔。
【世の中の枠からはみ出した男達の刹那的な生き様、死に様を描いた作品。非情極まりなき極北の映画。 非情なる世界を見事に映像化した故、石井監督の想いが伝わって来る作品であると思う。】
■バブル崩壊で多額の借金を背負った万代(佐藤浩市)。
 大越組からの代金強奪を計画していた彼は、コールドボーイの三屋(本木雅弘)、刑務所帰りの元刑事・氷頭(根津甚八)、リストラに遭った会社員の萩原(竹中直人)、元ボクサーのジミー(椎名桔平)と共に計画を実行するが、彼らは大越組のヒットマン、京谷(ビートたけし)に命を狙われていく。
◆感想<印象的な嫌なシーン>
・明らかに狂っている会社員の竹中直人演じる萩原が、矢鱈に家族の元に”お父さんは頑張ったんだぞ”と電話を掛けるシーン。
ー 彼が、久しぶりに家に帰って際に、家の中に飛んでいる蠅の音。気持ち悪い事、この上なしである。そして、彼は自らが手に掛けた妻と子供達の屍の中、京谷に額を撃ち抜かれる。
  今作は、資料を見ると竹中直人が石井監督に”パルプフィクションみたいな映画を撮りましょう”と言った事が切っ掛けだそうであるが、パルプフィクションどころではない、後味の悪さである。-
・元ボクサーのジミーを演じた椎名桔平は、最初全く分からず・・。彼と情婦の最期も後味が悪い事、この上なしである。
・故、根津甚八が演じた氷頭の妻と娘が凶弾に斃れるシーンも後味が悪い。
ー この名優の哀しき目力が随所で見られるだけでも、この作品には価値があると思う。-
・万代や、三屋の最期も後味が悪い事、この上なしである。
<今作は、逝去された石井監督の出世作である。
 それまでの極道映画には、”滅びの美学”などという言葉が良く使われていたそうであるが、この作品には美学の欠片もない。
 だが、それ故に今作の価値があるのだと思う。
 現在の邦画では、暴対法の関係もあるかもしれないが、今作のような非情極まりなき極北の映画は製作出来ないのではないだろうか。
 その点を、見事に映像化した石井監督の想いが伝わって来る作品であると思う。>
以前ビデオで観た映画だが改めて。何故だか分からないが、今日まで北野...
役者の適材適所が光る映画だった
顔面マヒナスターズ
5人のアウトロー
石井隆監督1995年の作品。
邦画アクションに於いても未だに鮮烈に残る傑作。
借金まみれのディスコのオーナー、万代。
男相手のコールボーイ、三屋。
元刑事、氷頭。
リストラされたサラリーマン、荻原。
パンチドランカーの元ボクサー、ジミー。
社会から弾き出された5人の男が出会って、万代のディスコを取り仕切る暴力団・大越組の大金を強奪する計画を企てる。
見事成功するが、仲間の一人から足が付き、雇われた二人組の殺し屋に追い詰められ…。
スタイリッシュ!クール!バイオレンス!
鬼才の才気が冴えまくるスリリングな世界。
佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平…豪華な面々。
本木は個性的、竹中はかなりアブナイ、根津が渋くカッコいい。
大越組組長の永島敏行、殺し屋役のビートたけしまで、贅沢。
男たちが皆、この作品/世界に合っている。
5人のやった事は無論犯罪。
故にその末路は予想付く。
悲しく、愚か。
何が彼らを狂わせたのか。バブル崩壊というあの頃の社会か。
それしか道は無かったのか。
男たちは時に、馬鹿な道を行き、自ら命を散らす。
男たちは時に、そんな男(アウトロー)たちに、憧れ惚れる。
50年~60年代は黒沢時代劇、70年~80年代は深作バイオレンス、90年代はこの『GONIN』、近年は『るろうに剣心』やその他。
邦画アクションだって捨てたもんじゃない!
過去鑑賞
邦画の大傑作!!
本格派ハードボイルド
"九人"
もっとイカれて突き抜けた役かと思いきや、無難な役どころのモックン。
張り切って可笑しな演技を厚かましく披露した竹中直人の存在感がウザい。
この二人の努力も水の泡、ビートたけしが全部持ってく不気味な様相で本作の陰鬱な雰囲気を一人で作り上げているのは気のせいか!?
主役として文句なしな佐藤浩市と本木雅弘の共演、絡みは今一つながら世代も近い?木村一八にビートたけしとのラストを演じるモックン、クールな渋さ全開の根津甚八、ヤクザ役がハマっている鶴見慎吾、ワンシーンながら威圧感満載な室田日出男などなど。
もう絶対に拝めない豪華で奇妙なキャスト陣の共演が、一番観たいと思わせる役柄と物語で贅沢極まりない本作。
ありきたりな物語ではあるが、キャストの斬新さで勝っているのは否めない。か。
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