「千重子よりも苗子の奥ゆかしさに感動を覚え…」古都(1963) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
千重子よりも苗子の奥ゆかしさに感動を覚え…
京都観光旅行のガイド本代わりに
原作を読み、
川端康成文学の中では
特に好きになった作品。
旅行の後、映画化作品が3作もあると知って
全てレンタルして、
古い順にこの作品から観ることにした。
内容はほぼ原作通りだったが、
まずは、岩下志麻の一人二役の映像が
60年以上も前の作品としては完璧な処理で
驚かされた。
鑑賞中は、
原作で感じていた京都観光的要素よりも、
徐々に登場人物の性格描写に
興味のウエイトが移っていくのを感じ、
主役の双子や千重子の両親も含め、
なんと奥ゆかしい日本人的気質の
登場人物に溢れた作品なのだろうと
感じさせられ、
これが川端文学の真髄の一端なのかも
と考えされられた。
そんな中でも、原作を読んだ時には、
そこまでは感じなかったが、
この映画作品を観て、
川端康成は千重子を主人公にしながらも、
苗子が、
千重子をいつまでもお嬢さんと呼んだり、
苗子に結婚を望む男性は千重子の身代わり
・幻を見てのアプローチであると語ったり、
千重子の生活環境を壊したくないと
思い遣る苗子の人間像の中にこそ、
奥ゆかしい日本人の心を投影
させていたように感じ、
その生き様に感動を覚えた。
さて、1980年の山口百恵版はどうだろうか。
千重子・苗子の人となりは
どう描かれているだろうか。
この岩下志麻版との比較が楽しみに
なってきた。
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