劇場公開日 1995年12月9日

「破壊と再生と奇跡 ゴジラは体内でメルトダウンをおこして死にます 日本経済もバブルがメルトダウンして死にそうになっていたのです」ゴジラVSデストロイア あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5破壊と再生と奇跡 ゴジラは体内でメルトダウンをおこして死にます 日本経済もバブルがメルトダウンして死にそうになっていたのです

2022年5月15日
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鑑賞方法:VOD

平成ゴジラシリーズ最終作
これは面白い!

1995年12月公開
この年は阪神大震災で年が明け、春には地下鉄サリン事件が起こり、バブル崩壊が一層進み今のお台場の臨海副都心で開催されるはずだった博覧会が中止されるなど騒然とした年でした

現実の方がこうなんだから、年の瀬の締めくくりにまで怪獣映画はなんだかもうお腹一杯という感じにまでなったそんな年だったのです

前作のvsスペースゴジラの出来が良くなく、そこへ競合のガメラシリーズが1995年3月11日!に復活してきました

しかもその平成ガメラの内容は大変に優れていて、怪獣映画ファンのオタクだけにとどまらす、国内の様々な映画賞を数多く受賞、映画業界人や映画ファンのうるさ方が読む映画専門誌「キネマ旬報」の年間ランキングでも6位にはいる快挙を成し遂げるほどのものであったのです

これには東宝も危機感を感じるざるを得ません
よって本作の製作陣は最強の布陣で有終の美を飾ろうというものになりました

監督、大河原孝夫
特技監督、川北紘一
音楽監督、伊福部昭
脚本、大森一樹
ゴジラ演者、薩摩剣八郎

お話はゴジラが死ぬという最終作らしいもの
何故死ぬのかというと、ゴジラが体内エネルギーとしている原子力が暴走するという設定です
これはシン・ゴジラに流用されたモチーフになります

そこにデストロイアという敵怪獣が出現するという展開

デストロイアは超古代の微生物
それが臨海開発の青海トンネル工事と、1954年のゴジラでのオキシジェンデストロイヤーの残滓が絡んで復活したものだから、急速に微小体から、人間大になり、さらには巨大化と進化していくのです

エイリアン、エイリアン2のパクリ、もとい影響が強いです

エイリアン2は1986年の映画
あのエイリアンの群れをどの様にして撮影したのか?
真似と言われようが同じことをしてみないことにはどのような特撮技術が必要なのかすらわからないのです
日本の特撮が10年は立ち遅れている部分を、習得していく為の大切なトライの機会なのです
知識として技術を知っているだけでなく、実際にやってみて初めてわかることもあるのです
こういうことの積み重ねがあってこそ、日本の特撮は今日まで活躍できたのです
そのトライの姿勢には敬意を払うべきです

デストロイアの人間大程度の幼体群れとのアクションシーンはまんまです

大森海岸の品川水族館、天王洲アイルの東対岸の品川火力発電所と、品川が舞台になります
これは1954年のゴジラがこの辺りから上陸したからです
シン・ゴジラの第2形態通称蒲田くんも品川火力発電所西側の天王洲アイルを挟んだ北品川駅付近で第3形態に変化しています

そして1954年版のゴジラのオキシジェンデストロイヤーが作動した海も、品川のこの埋め立て地がまだ海であった頃のところだったのです

本作の物語は1954年版につながっています
なので1954年のゴジラのシーンが幾つか挿入され、さらに第1作のヒロイン山根恵美子も登場します
当時22歳の設定でしたから63歳での再登場です
演じるのは第1作と同じく河内桃子!
彼女は南海サルベージの尾形の恋人でしたが、結局結婚しなかったようで姓が変わっておらず、故人となった山根博士の屋敷に今も住んでいるという設定です
大戸島の孤児新吉をひきとって育てあげたことになっており、新吉の子供が山根ゆかりと健吉です

1984年のゴジラの世界線とはつながりがありません
ゴジラvsキングギドラで歴史が改編されて、そうなってしまったのかも知れません

しかしvsビオランテの世界線とは直接つながっているようですが、vsメカゴジラ、vsスペースゴジラの世界線ともつながっていません

よってvsメカゴジラ、vsスペースゴジラで活躍したGフォースが本作では登場しません
代わりに陸上自衛隊が対処しています

対ゴジラ用スーパーメカもvsビオランテで登場した陸上自衛隊のスーパーX2の後継機と思われるSX IIIが登場します

陸上自衛隊の戦車と同じオリーブドラブ色に塗装され、陸上自衛隊と白文字で書かれていて兵器ぽいです

形状も名称も1984年のゴジラに登場したスーパーX に似ていますが、本作は1984年のゴジラには世界線がつながっていませんから他人の空似ということになります

三枝未希もGフォースではなくサイキックセンター主任という肩書きで登場しています

インターネットが登場します
日本語版のWindows 95が発売されたのは1995年の11月23日のことでした
本作公開のわずか2週間ほど前のことです
超ホットな話題だったのです
劇中、ネットで世界中の学者に助けてもらうというところはシン・ゴジラにもスパコンのリソースを提供してもらう形で反映されていきます

携帯も登場します
1994年にレンタルのみが売り切り制になって普及しはじめた頃でした

臨海副都心が最終決戦の場所です
東京ビッグサイトが登場します
1995年10月の竣工、開館したのは翌年4月
今ではすっかりコミケの場所として定着していますが、歴史を辿ると1975年が初開催で色んな場所での開催を経て、本作の公開の翌年1996年の夏からここで開催されるようになったのです

本作公開の翌年1996年3月から世界都市博覧会というものが、お台場周辺で開催予定でした
当初の脚本ではこの博覧会の会場で決戦する筈だったようです

ところが本作公開の同年1995年4月の都知事選に当選したタレント出身の青島幸夫新都知事が、バブル崩壊の中で開催してもどうなのかとこの博覧会を開催の9ヵ月前、298日前に中止することを決定します
数百億の損金がでたそうです
これにより臨海副都心の未来も変わり私達の知るお台場になったのです

本作もまた博覧会の会場を破壊することはなくなってしまったのです

メルトダウンは、この当時は有り得ないことだとされていました
チャイナシンドロームは1979年の同名の映画で有名になった言葉でした
具体的にどうなるのかよくわかっていないイメージだけの話でした
それが本作から16年後、福島で本当に起きてしまいました
恐ろしいことに私達はパニック映画や怪獣映画以上の時代に生きているのです

香港で真っ赤になったゴジラが暴れまわるシーンは、2021年の「コングvsゴジラ」でオマージュされましたね

最後に東京のまん中でゴジラはメルトダウンして、大量の放射能を撒き散らしはじめるのです
本作ではその放射能がゴジラジュニアの再生で消え去ってしまうという奇跡が起こり日本は救われます

破壊と再生と奇跡
ゴジラは体内でメルトダウンをおこして死にます
日本経済もバブルがメルトダウンして死にそうになっていたのです

現実には本作のような奇跡は起こりはしません
現実のメルトダウンは、未だに広大な帰還困難地が残されたままです
シン・ゴジラでもゴジラを凍結させただけでした
そして日本経済もまた失われた30年になってしまいました

福島原発の廃炉は困難な状況が続いているようです
汚染水の海洋放出は来春から予定されているそうです

令和のゴジラシリーズがあるなら、恐らくこれを飲みにゴジラは現れるのではないでしょうか?

あき240