「30年という時間の流れ」ゴジラ komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
30年という時間の流れ
昔テレビで観た以来の鑑賞。ストーリーはほとんど忘れていたが、スーパーXと武田鉄矢だけは記憶に残っていた。
この作品の特徴は、全体的に哀愁を感じさせるところだろうか。
銀座には有楽町マリオンが建ち、西新宿には超高層ビルが次々と出来上がっていった頃。初代では山の向こうから覗けたゴジラが、今作では人の作った建物群に埋もれている。時間の流れの速さを感じさせる。
また、音楽も哀愁たっぷりだ。ゴジラが三原山に登るシーンで流れる曲はまるで葬送曲。その後流れる曲は映画「ひまわり」のテーマ曲を思い起こさせる。
最後、船の仲間の仇討ちとばかりにダイナマイトの点火スイッチを押す奥村によって、三原山の噴火口にゴジラが落ちていくシーンはなかなかに切ない。
そして、その様子を見守る首相やその取り巻きや林田博士といった大人たちの表情と、ヘリコプターから顛末を見た牧と尚子の表情がとても対照的。それは、戦争を知る世代と知らない世代であり、畏怖を知る世代と知らない世代、つまりこの30年の時間の流れを象徴したシーンだと感じた。
個人的に本作のゴジラのデザインはとても好み。非存在のデータにはない人臭さと安心感が私には心地よい。更に円熟の域に達したと思える特撮シーンも見応えがある。人の善性を前に出したストーリーも良く、30周年としてとても良い作品だったと思う。
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