「哀しき親子のドラマ」メカゴジラの逆襲 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しき親子のドラマ
ゴジラシリーズ第15作。
Blu-rayで3回目の鑑賞。
前作で初登場したメカゴジラが、ファンの熱烈ラブコールに応えて再登場! ポスターや予告編でも“メカゴジラ・シリーズ第2弾”と銘打っており、ゴジラよりもメカゴジラを主役として推している感じ。内容的にもゴジラは添え物扱いが否めませんでした。ゴジラが出て来なくても成立する物語…。
それはさておき、久々に監督に本多猪四郎、音楽に伊福部昭―シリーズ草創期からのスタッフがカムバックして重厚な演出と音楽が光りました。シリーズ初にして唯一の女性脚本家である高山由紀子が紡ぎ出した親子の悲劇の物語は、大人の鑑賞に充分耐え得るなと改めて思いました。しかし、かなりシリアスな内容だったからか、シリーズ・ワーストとなる観客動員数を記録してしまい、シリーズの中断が決定。1984年の第16作「ゴジラ」まで9年間の休止期間に入りました。
ですが、本作が決して面白くないわけではありません! むしろ再評価されるべき作品だと自信を持って言える! 「東宝チャンピオンまつり」時期のゴジラ映画が子供受けを狙って(低予算ということもあったでしょうが)だんだんとチープな方向に傾斜して行ったのに比べ、本作はエモーショナルで重厚な人間ドラマ、久々の新撮による都市破壊シーンなど、原点回帰と言っても過言では無い演出に満ちているからです。
メカゴジラ2の回転ミサイルで地面ごと街が吹き飛ぶ場面や、チタノザウルスの尻尾から発せられる突風で何もかも吹き飛ばされるシーンなど、中野昭慶特技監督の面目躍如たるスペクタクル描写が満載で大満足・大感激!
ゴジラが暴れまわるシーンは「ゴジラ対メガロ」並みに少なかったですが、人類との共同戦線によるメカゴジラ2、チタノザウルスとの最終決戦は、ダイナミックな大爆発と光線技の鮮やかさが際立っていて手に汗握りました。
メインテーマは、真船親子の悲劇とその末路…。
人類への憎しみから、自らの目的のために娘さえも犠牲にする真船博士―。父親の復讐心を理解し加担するも、科学者・一之瀬との恋に揺れる桂…。世間からのバッシングに晒され、積年の恨みを熟成させて来た真船親子ですが、桂は父親の暴走を止めたいと考えており一之瀬に密かに手掛かりを渡したりしました。しかし、親を想う娘の心は届かなかったようです…。
メカゴジラ2のコントロール装置を体内に埋め込まれた桂は心を失ってしまいましたが、一之瀬の必死の呼び掛けに人間としての良心を取り戻し、自ら命を絶つことでメカゴジラ2を停止させました。嗚呼、何という悲劇…。
真船博士はただ自分の功績を世間に認めさせたかっただけでした。その方法が歪んでいたために悲劇を生み出してしまいました…。アジトに踏み込んだインターポール捜査官の銃弾を受け倒れたとき、最後に博士は何を思ったのでしょうか? 自分の行いを省みたのでしょうか? それとも…? とても悲しく、誰も報われない結末に震えました。
シリーズ第1作で、科学の発展による人類の暴走への警鐘として自らの命を持って発明を封印した芹沢博士を演じた平田昭彦が、「昭和シリーズ」の最後となった本作で真逆の人類を激しく憎むマッドサイエンティストを演じているというのは何だか感慨深いものがありました…。
【余談】
真船博士の復讐心につけ込んだブラックホール第三惑星人ですが、前作のおマヌケぶりが嘘のように、真面目に順当に侵略計画を遂行していました…。その調子で頑張って!(笑)
※追記(2018/12/22)
本編と特撮の撮影を担当した富岡素敬氏の語る裏話はとても興味深くて、当時の苦労を知ることが出来ました。勝手が違ったでしょうから、大変な撮影だったのだな、と…。インタビュー当時は本作公開から30年経過しているにも関わらず、鮮明な記憶でありのままを話していました。さすが職人…。
※追記(2019/02/02)
夕景の海を帰っていくゴジラが、ひたすらにカッコいい…。偶然だったとは言え、「昭和シリーズ」のラストを飾るに相応しい名場面だなと改めて思いました。
※鑑賞記録
2018/12/22:Blu-ray(オーディオ・コメンタリー)
2019/02/02:Blu-ray
2021/04/26:Amazonプライム・ビデオ