「社会問題をうまく調理」ゴジラ対ヘドラ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
社会問題をうまく調理
公開50周年を記念して渋谷パルコで展覧会が開かれているというニュースを見て再鑑賞。
エンタメ方向に舵を切ったゴジラシリーズだが公害問題を真正面に据えてヘドロ怪獣を産み出した、初代ゴジラの核実験由来と言うコンセプトに通じるものを感じて原点回帰かと期待が膨らむ。
ただ、主役はゴジラフリークの少年、ガメラの影響もあるのだろうがゴジラもすっかり子供たちのアイドル、地球の保護神に様変わり。
冒頭から汚れた海のゴミ映像に「かえせ!太陽を」という主題歌がかかる。監督の坂野義光さんの作詞だがまるでアンチ公害のシュプレヒコール。
♪~鳥も 魚も どこへいったの トンボも 蝶も どこへいったの
水銀 コバルト カドミウム ナマリ 硫酸 オキシダン シアン マンガン バナジウム クロム カリウム ストロンチュウム
汚れちまった海 汚れちまった空 生きもの みんな いなくなって 野も 山も 黙っちまった
地球の上に 誰も 誰もいなけりゃ 泣くことも出来ない かえせ かえせ かえせ かえせ
みどりを 青空を かえせ かえせ かえせ かえせ
青い海を かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ
命を太陽を かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ~♪
ところが劇中の若者はいたってノー天気、公害反対のゴーゴー大会を富士山麓で開いてどんちゃん騒ぎ。当時の若者文化への迎合かと思ったらヘドラに襲われ硫酸ミストで白骨化・・。
ヘドラも公害怪獣かと思ったら隕石に付着してやってきた宇宙生物由来とは、ちょと日和ったか。
オタマジャクシから変態を繰り返して空を飛ぶ、この辺はシン・ゴジラの変態のヒントになったかも・・。
相変わらず人間側は心もとない、博士のようだが一般市民にしか見えないおじさんがヘドラの生体解明や必殺兵器を考案というの非現実的、やっと自衛隊出動も肝心な時に停電で結局はゴジラにおいしいところを譲りました。
やっと倒したと思ったら復活のドッキリ、オープニングといいおまけドッキリと言いこの辺は007のフォーマットの影響を感じます。
なんと驚いたことにゴジラまでプラズマ噴き出しで空を飛ぶではありませんか。田中友幸・大プロデューサーは激怒したとか、それでもやったもの勝ち。最後は「シェーン」さながら、去りゆくゴジラを少年が見送ると言う映画フアンへのくすぐりなどサービス精神満載。
シビアな社会派コンセプトですが歌やアニメ挿入で重さを回避して軽妙に仕立てていますね、個人的には初代ゴジラのような硬派な作風が好みなのでやや失望感はありますが商業映画としては難しい時代だったのでしょう。