「「ちきしょう!」」ゴジラ(1954) komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
「ちきしょう!」
この作品を観て、何故ゴジラの下半身があんなにも太いのかを理解した。恐怖は遥か遠くから大きな地響きとともに近づいてくるのだ。その為には、肉食恐竜のような細い脚では全くもって説得力が足りないのだ。
焼け野原の東京を地響きをたてながら悠然と歩くゴジラ。大戸島で家族を失った少年が、街を蹂躙するゴジラに向かって「ちきしょう!ちきしょう!」と叫ぶ。
その叫びを聞き、『ちちをかえせ ははをかえせ』で始まる峠三吉の「原爆詩集」を思い出す。東京大空襲への怒りを書に叩きつけた井上有一の「噫(ああ)横川国民学校」を思い出す。
ただ、この作品は過去を見つめたものではない。未来を見据え、警鐘を鳴らすものである。科学技術の進歩を止められないものとしつつ、山根と芹沢という研究者を通して、我々に理性を問うている。それは70年経った今、より重たいものになっている。
最後、海底に沈み骨となるゴジラ。その姿を見て悲しくなるのはなぜだろうか。
特撮映画としてだけでなく、骨太な中身を持った映画作品。今後、このような映画が作られることのないようにという、強い思いを感じる。
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