劇場公開日 1972年10月28日

「【”落魄の美。”高度経済成長期、瀬戸内海の小さな島で父から引き継いだ石運搬船の運用で生計を立てる夫婦が、世の流れで廃業し島を離れる様を描いた作品。】」故郷(1972) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 【”落魄の美。”高度経済成長期、瀬戸内海の小さな島で父から引き継いだ石運搬船の運用で生計を立てる夫婦が、世の流れで廃業し島を離れる様を描いた作品。】

2025年9月17日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■瀬戸内海の小さな島。精一(井川比佐志)と民子(倍賞千恵子)の夫婦は、父(笠智衆)から引き継いだ石運搬船の運用を生業として、毎日、額に汗して働いている。
 裕福ではないが、2人の子供と精一の父と共に島で暮らしていた。しかし、木造船のエンジンの調子が悪く、精一は何とか修理しようとするが費用が高く、廃業を決意するのである。

◆感想

・山田洋次監督は”民子シリーズ”で、高度経済成長により、仕事を失い、故郷を離れざるを得なかった人たちの姿を残したくて、製作したのではないかなと思う。

・気のいい八百屋の松下さん(渥美清:この方が出演すると、何故かとてもホッとする。)が。”笑いながら言う。
 ”船長さんの仕事は、大きな工場よりも厳しい。けれども、賃金は安い。”

・今の日本は、第一次産業は衰退し、今まで日本を支えて来た産業の一つである製造業にも、若い人は来なくなった。
 工業高校を出ても、汗にまみれる仕事は敬遠される時代になったのである。

・では、若い人は何をするかというと、第三次産業に付く人が多くなった。これも世の流れであろう。

<山田洋次監督は、当時から将来の日本が、どのようになって行くのかを見越していたのではないか、と思ってしまった作品である。
 令和の現代に観ると貴重な映画だと思うし、精一と民子が厳しい状況下で必死に生きる姿は尊いと思った作品である。>

NOBU
Mr.C.B.2さんのコメント
2025年9月18日

「故郷」の方が「家族」より後に製作されたので、島を離れた民子の家族がたどる姿が想像できて悲しい。「故郷」を観た時に、父が島に残るのも「家族」の父のようにならないから良かったと思ってしまいました。
魚屋でも八百屋でもテキ屋でも警官でも渥美清さんが出て来るとほっとしますね。

Mr.C.B.2
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