劇場公開日 1971年8月14日

「罪を贖えるのか?〜沖縄を知るキッカケに」激動の昭和史 沖縄決戦 Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0罪を贖えるのか?〜沖縄を知るキッカケに

2023年11月29日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

悲しい

怖い

映画の中盤、
宅嶋徳光海軍中尉が遺した有名な詩が印象的に読み上げられる。
(映画では触れられないが、実は、宅嶋中尉が戦死したのは東北地方で、直接的には沖縄戦とは無関係な存在と言える。作中、菊水作戦で散りゆく特攻隊の実写映像を背景に、彼の詩がインサートされる)

『俺の言葉に泣いた奴が一人
俺を恨んでいる奴がひとり
それでも本当に俺を忘れないでいてくれる奴がひとり
おれが死んだらくちなしの花を飾ってくれる奴が一人
みんな併せてたった一人』

これだけにとどまらず、
敗色濃厚な中、命じられるまま死地に赴く若者たちにヒロイズムをくすぐられる演出が随所に顔を出すが、
それらのみに気をとられてはならない気がする。

対馬丸事件、
伊江島の戦い、
菊水作戦(陸海軍航空隊による大規模特攻)
沖縄水上特攻(戦艦大和の最期)、
義烈空挺隊、
ひめゆりはじめ多数の学徒隊・・・

邦画でありながら、
日本軍が完膚なきまで負け続ける姿、登場人物の大半が次々と亡くなるのを、これでもか、これでもか、というくらい見ることになる訳だが、

これを製作した皆さんは(私の勝手な想像だが)、

・戦争の悲惨さや無益さを訴えるだけでなく、
・強引に日本国に編入した「琉球処分」から、わずか70年足らずで、15万人以上の犠牲を出した沖縄県民への贖罪の意味の記録を残したかった、

のだと信じたい。

陸軍中枢が『本土決戦のための時間稼ぎ』と沖縄戦を位置付けた瞬間から、
残念ながら、沖縄は本土として扱われていない。

島国・日本が、本土と離島を区別している事自体が歪んでいるし、悪い冗談としか言いようがない。

ラストシーン、老婆がアメリカの戦車に向かい、踊りながら近づいていく。
『唐船ドーイ』の歌声が胸に突き刺さる。

琉球処分から沖縄戦まで、日本が沖縄にしてきたことを知れば、「基地が沖縄に集中するのは、地理的に仕方ないよ」なんて簡単に言えなくなるはずだ。

Haihai