「金八先生版寅さんかと思いきや」刑事物語 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
金八先生版寅さんかと思いきや
この刑事物語第1作は地上波放送がなかなかされない事である意味有名だそうだが、自分はまだ自主規制が緩やかだった約四十年前にテレビ放送で鑑賞している。
ヒロインが聾唖のトルコ嬢で、覚醒剤が絡んだ売春組織が捜査対象という設定上、女性の裸がバンバン出てくる事もあり現在において地上波放送はハードルが高いというのは致し方ないのかもしれない。
「幸せの黄色いハンカチ」からテレビシリーズ「3年B組金八先生」で人気役者として不動の地位を得た武田鉄矢がイメージ定着を嫌ったのか、キレると手がつけられない暴力的な刑事役でアクションとエロという真逆の設定に自らの脚本で臨んだ意欲作である。
寅さんのように毎回最後はヒロインにフラれてしまうというホンワカとしたお約束はあるものの、鍛え上げられた肉体で蟷螂拳とハンガーヌンチャクを駆使しての本格的な格闘シーンが本作の一番の見どころであると思う。
ヒロイン役の有賀久代は当時現役の美大生でオーディションにて選ばれた新人女優だが、自分の演技を見て才能のなさを感じ本作のみで芸能界を引退をしている。
素人目だが、とても新人とは思えぬ程の体当たりの熱演をしており、あまりの理想の高さに驚かされる。
もっとも冒頭のトルコ風呂へのガサ入れシーンで画面に初登場した時の彼女の日本人離れした抜群のプロポーションの方が世の男性達はもっと驚かされたがw。
本シリーズはこれで人気を得て第5作まで制作されるが、第3作潮騒の詩は東宝シンデレラでグランプリを獲ったばかりの沢口靖子のデビュー作となっている。
主題歌の「唇をかみしめて」は武田鉄矢のフォークミュージシャンの大先輩である吉田拓郎にお願いをして書き下ろしてもらったそうだが、映像の雰囲気とあまりにもマッチしており聴くだけでも涙を誘う名曲である。
久しぶりにみる昭和の日本映画ってやっぱりいいもんだなあと改めて思わされる名作だと思う。