「挑戦者たち」黒部の太陽 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
挑戦者たち
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原作は未読です。
三船敏郎と石原裕次郎―二大スターが豪華初共演! 比類無き熱意で完遂された黒四ダム建設の実話を、壮大なスケールで映像化した問答無用・完全無欠・唯一無二の超大作。
このふたりが並んで画面に収まっている、というだけでもはや大事件!(笑) ふたり共オーラがハンパねぇ~!!! スターの貫禄が迸っていて、もうそれだけで感涙もの(笑)
高度経済成長による電力需要増加に伴い、関西電力が威信を賭けて開始した本事業は、総工費400億円超の大規模なもので、参加した一次下請け企業は熊谷組、大成建設などの大手ゼネコン。二次以降の下請けとなると作業員数は途方も無い数となり、戦後の繁栄を象徴する一大工事となりました。
ダム建設のためには、人員や資材等を現場へ運び込むためのトンネルが必要でした。しかし黒部峡谷の地下には、中央構造体―フォッサ・マグナが走っており、その構造はまだ未知の部分が多く、非常な困難を伴うことは確実でした…。
いざ工事は開始されましたが、順調に推移していたと思われたトンネル掘削は、当初の懸念通り、破砕帯と呼ばれる岩盤に阻まれることに…。岩盤から流出した大量の地下水は、猛烈な勢いで吹き出し、何もかも飲み込んでいきました。
出水シーンは圧巻の一言! タンクに溜めた水を一気にセットに流し込むというやり直しのきかない一発勝負。裕次郎も三船もスタント無しで実際に流されていて、驚きました。そのシーンは死亡事故寸前の壮絶な撮影だったそうで、命を懸けた迫真の演技だったからこその迫力なのかと目を見張りました。
破砕帯に突入した後は、いつ果てるとも分からない水との戦いになりました。水抜きのためのパイロット・トンネルを掘るも、破砕帯の規模が未知のため、掘っては出水、ルートを変えて掘ってはまた出水…と気の遠くなるような作業…。
現場に漂う絶望感、それでも一日数センチでも掘り進めていく…。だからこそ、貫通したときの高揚感たるや! しかし、そこへ辿り着くまでには、多くの犠牲が伴っていたことを、決して忘れてはいけないなと思いました。今日の繁栄の裏に籠められた、たくさんの人々の想いを、知っておかなくては…。
【余談】
私は現場監督の仕事をしています。本作での描写がどこまで正確なのかは分かりませんが、昔の現場の話でよく耳にするのは、安全第一は標榜するものの、その実態はノー安全、ノー・コンプライアンスだったというもの…。確かに危険作業のオンパレードで、観ていてひやひやするシーンがたくさんありました。ヒヤリ・はっと大量に書けそうだなと思いました。
あと、気合いと根性という精神論は、未だ工事現場では根深い思想として滞留しているように感じますが、それだけじゃ成し遂げられないことだってあるんじゃないかなぁ、と…。こういう精神論、私はあまり好きではありません。今のご時世だと、パワハラに直結することにもなるし…。でも本作を観て、最後の最後に物を言うのは、もしかしたら気合いと根性なのかもしれないなと思わされました。理論も大事なんだけど、気力が無けりゃあ出来ないことだってあるのかも…。