黒い潮のレビュー・感想・評価
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記者たちのポンコツぶりが
下山事件(映画では秋山)の謎を追う新聞記者の話となれば、松本清張氏張りの社会派推理を彷彿させると思いきや、トップシーンでいきなり秋山国鉄総裁は、豪雨の中、列車に飛び込んでしまう。しかも目撃者ありで。実際の下山事件が他殺説、自殺説と別れる中、この映画は自殺説で話を進めている。まあ、協賛が毎日新聞だからなあ。でも、いきなり答えを見せて、どうするの?自殺か他殺かで右往左往する記者たちを見ながら、「おいおい、目撃者いるやろ」と突っ込みを入れたくなる。その目撃者が賞金につれられて、山村記者の前に現れるも他の記者たちは、バカ呼ばわりして追い返してしまう。なんと言う人権感覚💢😠💢。山村記者もそのままにするなよ。柳谷寛写真部員は立ち入り禁止の場所に入って写真撮るし。祇園の私有地で傍若無人に写真を撮る外国人観光客か。だから、ケムール人に消されるんだ。左幸子事務員はちゃん付けで呼ぶし。新聞社幹部にいたっては、真実よりも他紙のことを気にするばかり。山村記者は真実意外は絶対に書くまいと心に誓っているらしいが、その理由が、彼の妻が流行歌手と心中した際、新聞が興味本位な記事を書き立てたため、彼はご近所のひそひそ話の格好のネタにされてしまったため。これだよ。下山事件よりも、こちらの方で映画を作れば、現代にも通じる作品になったのに。残念( ´△`)。まあ、若い頃の左幸子女子がアイドル並みに可愛いかったのが、驚き😍⤴️⤴️。
報道の舞台裏とトラウマが絡み合う暗い渦潮
真相を巡る議論が今なお絶えない下山事件を題材に、昭和の名優、山村聰が主演と監督を兼ねた社会派作品。
国鉄(現JR)総裁の謎の死を巡り憶測記事が飛び交うなか、メディアの責任として根拠のない予断を避けようとする中堅記者、速水。彼の過去には忌まわしい記憶が…。
原作者の井上靖(けっこう読んでるけど、こんな話あるの知らなかった)も事件のあった1949年当時は新聞記者。所属した毎日新聞は自殺説を採り、他殺説を推す朝日や読売と激しい論戦を重ねていた。
事件の前年に太宰治が起こした心中事件では報道合戦のなか、心中相手の一般人のプライバシーが無視され、そうした当時のメディアの風潮が速水の過去に投影されている。
報道の内幕をよく知る井上だからこそ、踏み込んだ内容に出来たような気も。サスペンスにありがちな刑事目線の謎解きではなく、現場の葛藤に主眼を置いている点も彼ならではと言える。
原作もいっぺん読んでみないと。
事件化して世論誘導し、左翼取締まりの口実にしたかったGHQに翻弄された警察とマスコミ。
コンプライアンスという概念のなかった時代とはいえ、メディアの倫理よりも利益を重視するあまり簡単に踊らされた報道機関に、戦時中に軍国主義の補助エンジン化して戦争遂行を加速させたことへの反省があったのか、あらためて考えさせられる。
日活の製作だが、五社協定の前なので多彩な顔触れ。
同じ年に公開された『七人の侍』ではチョイ役だった東野英治郎は速水の恩師役として落ち着いた演技をみせている。
ほんとは声で誰か分かる進藤英太郎は上品ぶった身なりと口ぶりで、最初誰か気づかなかった。
ともに速水に想いを寄せる津島恵子と左幸子の美の競演も見どころ。左演じる節子がいじらしい。
みずから主演を任じた山村はさすがの存在感だが、自分がよく知る頃より声がまだ若い。
前年に監督した『蟹工船』も機会があれば視聴したいが、『ガン・ホー』(1986)ももう一度観たい。
『新劇の巨人・滝沢修の仕事』特集で観賞。
企画のチョイスが渋いのに、今気付いたけど駄洒落!?
本作では速水の上司、山名部長役を好演していました。
ナレーション過多なのが残念。
冒頭の轢死の特撮がチャチいのも難。
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