「とにかく根岸吉太郎監督の演出力の凄さがよくわかる作品です」狂った果実(1981) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
とにかく根岸吉太郎監督の演出力の凄さがよくわかる作品です
感動しました
日活ロマンポルノの最高の傑作の一つなのは間違いありません
終盤の爆発力は空恐ろしいほどです
良い映画を観たという喜びと満足感があります
エロシーンは多くもなく、現代の目からすれば何でもないもので、女性も安心してご覧頂けると思います
本作は超有名な石原裕次郎主演の1956年の同名映画のリメイクではありません
アリスという1970年代に大ヒット曲を連発して活躍したグループの同名のヒット曲をモチーフにした映画です
アリスといっても、21世紀生まれの方には知らない人が多いかも知れません
ほらカラオケで団塊世代の超お偉方がしめに良く歌う曲、昴で有名な谷村新司がいた日本のフォークロックグループです
世界的なシティポップ・ブームの文脈からも外れて今では少し忘れられがちです
この本作のモチーフとなったヒット曲は1980年7月発売
彼らがトップ10に送り込んだ最後のヒット曲でした
本作では主題歌として最後にかかります
歌詞と映画の内容が見事にシンクロしています
ヒロインの蜷川有紀は、あの怖い蜷川幸雄の姪です
序盤こそ演技に首を傾げてしまうのですが、終盤では恐ろしいほどに役そのものに憑依した女性になっています
とにかく根岸吉太郎監督の演出力の凄さがよくわかる作品です
本作は1981年4月公開
名作「遠雷」は同年10月の公開です
わずか半年後のことです
そして大ヒット作「探偵物語」は1983年7月公開
監督の恐るべき才能が本作でビッグバンを起こしたのです
1981年の青春
42年も昔のこと
そんな昔話、老人の回顧趣味だろ?
ところが違うのです
今風に言えばリア充の華やかな青春を送る若者と、底辺で先の見えない将来の中で貧しく暮らす若者の青春
その構造は21世紀でも同じなのです
リア充の若者の青春と非正規でギリギリの生活を送る若者の青春の対比として観ろと、ビシビシと画面から監督のメッセージが時を超えて伝わってくるのです
リメイクされるべきです