「“女王蜂”の華の乏しさがミステリー」女王蜂(1978) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
“女王蜂”の華の乏しさがミステリー
監督・市川崑×主演・石坂浩二による金田一耕助シリーズ第4弾。
ある絶世の美女の婚約者の座を狙う男たちが次々に殺されていく不可解な連続殺人を機に、19年前の怪事件の謎も紐解かれていく…。
舞台の変更や、19年前の事件が冒頭にて簡潔にまとめられ、いきなり現在の時計台の殺人シーンから始まったりと脚色もされているが、前作「獄門島」のような犯人を変えるほどの大胆な改変は無く、概ね原作に忠実。
美女、旧家にまつわる血生臭い今昔の事件、悲しき因果…原作に於いても極めて横溝ミステリーの王道。
良く言えば毎度お馴染み安定のこの世界観、悪く言えばド定番の新味ナシ。
が、本作は映像面やキャスト面にこそ注目したい。
紅葉美しい伊豆と京都の秋。
文芸映画も得意とする監督の手腕が発揮され、お茶会のシーンはそんな文芸映画を見ているかのよう。
正月興行に相応しい華やかさ。
毎回毎回豪華キャストのこのシリーズだが、本作はその極み。
何てったって、「犬神」から高峰三枝子、「手毬唄」から岸恵子、「獄門島」から司葉子、前3作で犯人を演じた女優が贅沢にも揃い踏み。
冒頭の仲代達矢の若作りは無理あるが、現在になってからはさすがドンピシャのキャスティング。
その仲代と彼に想いを寄せる岸恵子の淡く哀しい大人の関係が美味しい所をさらってしまい、沖雅也演じる多門と美しきヒロイン智子の若い二人の方がどうも印象薄…。
さて、その智子だが…
原作では、“読者がどんなに想像を膨らましてもいい”ほどの絶世の美女。
演じるは、カ○ボ○のタイアップと共に華々しい(?)デビューを飾った中井貴恵。
確かにお美しい。が、
慕い寄る男たちを死に至らしめる“女王蜂”級の魅力は感じられず…。
毎回顔を合わせてるのに、何故か毎回金田一と初対面の加藤武警部。
いつも通り最初は「フンッ」と鼻で笑うが、
「金田一くん、また会おう!」本作のラストシーンは出色であった。
Xixiさん
コメントありがとうございます。
同時期のTVシリーズ版(横溝正史シリーズ)の『女王蜂』では若き頃の片平なぎさがヒロイン役で華があったんですが、こちらは…。
何だか残念でしたね。