「男子の通過儀礼・父親という乗り越えるべき壁」さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅 pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
男子の通過儀礼・父親という乗り越えるべき壁
ウラノス・クロノス・ゼウスの物語を繙くまでもなく、古今東西、少年が大人の「男」になる為の通過儀礼として「父親殺し(もちろん比喩的な意味でだ)」が必要である事は語られてきた。
本作も、そんな物語の一つだ。
前作で「母」を乗り越え、そして今回は「父」を乗り越える。
そんなテーマを根底に据えつつ、表面には、多感な少年少女達の琴線に触れる数々のエピソードが配置されている。ジュブナイル作品のお手本のような秀作だ。
子供時代、1番強く印象に残ったのは、ヘビーメルダーの衛星ラーメタルにて、パルチザン達が杯を掲げて唄うシーンだ。
たとえ命を失うとしても、隷属には決して屈しないという鉄の意思。
希望を同胞に託し、誇り高く生きる不屈の精神。
熱い命の讃歌が深く心に沁みた。
これをお読み下さっている中にも「ララ ラーラーララララー」の文字を見れば、すぐにメロディが浮かぶ方々が多数おられよう。
そして、本作では「泣けた」
前作では特に涙を誘われるシーンは無かったのだが(ダイジェストの為、ストーリーはハナからわかりきっていたし)「さよなら」の方は見事にやられた。
冒頭、999に乗る決意をした鉄郎を命懸けで送ってくれるパルチザンの仲間。
鉄郎を「ワシらの倅」と呼んでくれた彼らも、間違いなく鉄郎の「親父」なのだ。リーダー格と思われる老戦士が危機一髪でポイントを切り替えてくれるシーンは堪らなく泣けた。
(車掌さんの敬礼も胸に沁みる)
そして最大の号泣シーンは、鉄郎がメタルメナに言い迫る名場面だ。
わかっていても、事前にあらすじがすっかり読めていても。
「友の為に流す涙」の価値に涙腺崩壊だ。
(しかし実を言うと、今回改めて視聴したらこのシーンでは泣かなかった。
前出のポイント切り替え&999地球脱出の方が遥かに泣けた。
己の年齢が上がった事による、感情移入対象の変化によるものであろうw)
そしてクライマックスでは、エメラルダス言うところの
「宇宙で1番悲しいもの」を私達は目撃せねばならない。
松本作品には、この「宇宙で1番〜〜」「この世で1番◯◯」というフレーズが多用される。原作にて羊皮紙のような巻物に書かれていたり、謎めいた女性キャラクターが口にすると、子供には不思議な説得力があったものだ。
しかし、エメラルダスに余計な追加設定が加わってしまった現在、羊皮紙がオーバーラップしない新規鑑賞者には、間延びして映るかもしれないな、と感じた。
(愚かな追加設定により、エメラルダスはすでに謎めいた女性ではない)
また、インターネットで簡単に情報が手に入る現代の子供達には、この手の「冒険から学ぶ哲学」のような表現は、もう響かないのかな?と少し気にかかった。
いずれにもせよ、前作と本作合わせて「映画・銀河鉄道999 二部作」は白眉の名作だったと思う。(もちろん、対象は小学生からせいぜいローティーンまでである。)
本当に、これで「終着駅」にして欲しかった。「SAYONARA」にして欲しかった・・・。
これ以降の999関連作品は、すべて蛇足であり、松本御大が自ら晩節を汚した感がしてならない。つくづく残念である。
pipiさん、コメントありがとうございます。
短い文しか書いてないし、誤字はあるし・・・といった、わが拙レビューでしたが、pipiさんのレビューを読むとまた観たくなってきました!
TVアニメにハマっていた当時を思い出します・・・メーテルに恋してたあの頃。