銀河鉄道999のレビュー・感想・評価
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青春アニメ映画の名作、ちょっとビターなラストが心に残る
ある年代のアニメ製作関係者の方から、名作として語られることが多いアニメ映画のひとつ。テレビアニメ版から鉄郎の年齢が15歳に引き上げられ、メーテルとの旅のなかで少年が成長していくドラマが鮮やかに描かれます。見ていて2人と一緒に旅をしているような感覚になり、ゴダイゴによる主題歌も相まってちょっとビターなラストが心に残ります。
そんなの、年をとってから後悔すればいい…。 少年は自分の進む道だけを見据えていた。
【劇場版公開45周年記念】『銀河鉄道999 4Kリマスター版』(期間限定上映)にて。
15歳で漫画家デビューした松本零士は、高校卒業後に福岡の久留米から単身で上京する。
1957年のことである。
当時の長距離移動手段は夜汽車だった。
硬い座席に一人、見つめる窓の外は暗闇。
松本零士青年は、寂しさを紛らわすために息で曇る窓に女性の横顔を描き、二人旅を想像した。
そしていつしか、二人を乗せた列車は星空へと舞い上がっていったのだろう。
「宇宙戦艦ヤマト」の奇跡が起きたのは1977年。松本零士は一躍時の人となった。
やがて、「…ヤマト」の方向性において西崎義展プロデューサーと意見が食違い始めた松本零士は、自身のポリシーをアニメ映画に投射する企画に注力し始める。その第一弾が本作『銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)』だった。
既に東映動画によって「宇宙海賊キャプテンハーロック」がTVアニメ化されていて、東映動画の今田智憲社長(当時=本作の製作総指揮)が同TVアニメを高く評価したことから、チーフディレクターの りん・たろう を本作の監督に抜擢したらしい。東映動画の長編映画で他社所属の監督はこれが初めてだった。
りん・たろう は “WOWOWプラス” のインタビュー番組で、今田社長が「…ハーロック」の第1話に感動してお前と一緒に観たいと言うので試写室で隣に座って観ていたら、今田社長はまた涙を流していたと、当時を振り返っていた。
『約束』(’71,監督:斎藤耕一,脚本:石森史郎)の岸恵子と萩原健一の列車での会話に感銘した りん・たろう がアニメ作品の経験がなかった石森史郎に脚本を依頼したのだそうだ。
長編の監督が初めてだった りん・たろう は、絵コンテ作成に約1年かけたという。
「…ハーロック」放送開始から半年後、本作に先立って「銀河鉄道999」のTVアニメが放送を開始すると、たちまち広い層の支持を得た。
作画監督の小松原一男と音楽の青木望は映画版とテレビ版の両方を担当している(小松原一男は「…ハーロック」も担当)が、この映画とTVアニメは互いに関連しない独立した作品として制作が進められた。
まだ原作漫画は少年キングに連載中、TVアニメもフジテレビ系列でレギュラー放送中での公開だったにも拘らず、終着駅もメーテルの秘密も見せてしまったのだから驚いた。
松本零士は執筆する漫画よりもアニメの方を重視しているのだと、友人たちと話したのを覚えている。
ちなみに、2年半放送が続いたTVアニメも原作漫画が完結する前に最終回を迎えている。
企画・構成に直接的に関与した松本零士自身がそうだったように、男の子は旅立ち、そして大人になる。
その思いを脚本の石森史郎はより強調している。
メーテル、ハーロックなど鉄郎少年を熱く見つめる大人たちは皆、ひとりごちる。
それぞれのモノローグは、松本零士の言いまわしの特徴を捉えていて巧みだ。
機械伯爵の存在を原作よりも膨らませて鉄郎の当初の行動原理に位置づけたことで、この長大な物語を一本の映画に収める脚色は成功している。
そして、鉄郎の旅の目的が大きく転換し、「永遠に生きることが幸せではない。限りある命だから人は精一杯頑張るし、思いやりや優しさがそこに生まれるんだ」というテーマに行き着くのだ。
たった一人で戦おうとする鉄郎少年を強い大人が側面から支援する構成も熱い。
機械伯爵を追う鉄郎の盾となるアンタレス、機械化惑星に攻撃力を全開して突入するアルカディア号のハーロックと40人の海賊たち、クイーン・エメラルダス号のエメラルダス。アルカディア号の中枢にはトチローの心が宿っている。
戦士たちは、少年がその純粋な正義を貫くことを邪魔するものを排除する。そして、少年の正義は少年によって遂行されるのだ。
大人たちはこの不文律をわきまえているから、たまらなくカッコいい。
「いいか、鉄郎にかすり傷一つつけるな。無事に地球に帰すぞ」
「トチロー、あなたの意思は立派に鉄郎が継いでいる。死なすわけにはいかない」
りん・たろう の演出もスケールが大きい。
星雲が浮かび上がる宇宙空間に無音のまま文字が打ち出される「ひとがこの世に生まれる前からこの星は輝き…」
画面上手奥に小さく光が瞬くと、蒸気で駆動するピストンの音とともにその光は目の前に迫り、蒸気機関車の形状を現してカメラをなめるように下手に去っていく。
このときスクリーンいっぱいに映し出されたC62の足回りの描写は、松本零士独特のペンタッチが見事に再現されていて、圧倒されんばかりの迫力だ。
そして、城達也によるナレーション「人はみな星の海を見ながら旅に出る…」
毎夜FMラジオで聴き慣れた〝JET STREAM〟の機長の低く甘い声音だった。
レールのない空中に車輪を回転させて進む〝999〟の姿を追いながらナレーションは続く「…夢と希望と野心と若さを乗せて、列車は今日も走る…」
汽笛が高鳴る。
「…そして今、汽笛が新しい若者の旅立ちを告げる」
タイトル表示…
青木望による厳かな劇伴が流れる…
なんと素晴らしいアバンタイトルか!
手描きのセル画による少しギクシャクとした列車の動きに、なんとも言えない温かみがあるではないか。
さらに映像は〝999〟を追い続ける。メインスタッフ表示の背景で、劇伴に乗せて。
列車は絶妙のバランス感覚で発着用のレールに降りると、地上に向かって下降し、ターミナル駅に吸い込まれていく。
銀河超特急は今、地球に帰還した。
そして、間もなく始まる宇宙冒険旅行への折り返し運転の時を待つのだ。
そして本編の導入部。
地下の貧民窟で壁に貼られたハーロックたちの指名手配ポスターを見て振り向いた少年は、原作よりも少し年長の星野鉄郎だ。
鉄郎は仲間への合図に指笛を吹くと、脱兎のごとく駆け出し、ジャンプ一番のストップモーション。
そこで劇伴は軽快に転調して高鳴る。
宇宙へ飛び立つ前なのに、ここまでで映画のスケールの壮大さが伝わり、ワクワクさせる。実に見事だ。
この映画には〝999〟が地球を出発するシーンが2回ある。
初めて鉄郎がメーテルとともに乗車した旅立ちのときと、地球に帰り着いた後メーテルだけを乗せて出発する別れのとき。
どちらも〝999〟の出発にゴダイゴの歌が重なる。
旅立ちを唄う「テイキング・オフ!」は、軽やかに少年の夢を応援する。
このときの鉄郎は、機械の身体と永遠の命を手に入れることが旅の目的だった。
亡くなった母や、地球に残した仲間たちに思いを馳せながら、アンドロメダを目指す。
タケカワユキヒデの歌声。
「♪年老いた大地を思い切り蹴って、星たちの彼方へ、さあ、飛び立て♪」
別れのときは、かの大ヒット主題歌が新たな未来への希望を唄い、ひとつ成長した少年をもう一度歩き出させる。
まず、ストリングスの調べが鉄郎とメーテルの別れに涙を誘う。
動き出した〝999〟で長い金髪をなびかせるメーテル、列車を走って追う鉄郎、最後尾でそれを見つめる車掌。
レールの終わりを越えた〝999〟は空に輝く一筋の光になる。
城達也のナレーション「…さらば少年の日よ」
ミッキー吉野によるイントロ。
鉄郎は、涙を拭い、振り向いて歩き始める。
タケカワユキヒデの歌声。
「♪古い夢は置いて行くがいい、再び始まるドラマのために♪」
松本零士は主題歌を人気バンドに任せることに懐疑的だったが、完成したエンディングを観て、漫画では出せない効果に感激したという。
松本零士の独特の絵柄は、そのデッサンとペンタッチを真似るのが難しい。
時折メーテルの顔のバランスが狂ってしまうところに、原画担当の苦労を窺わせる。
ところが、ハーロックの描画はまるで松本零士の絵がそのまま動いているかのようだった…。
壮大な銀河の物語を2時間に収めるのはやはり難しい
少年の決意と大人の後悔
子供の頃、この作品の漫画を読んだ。
ちょうどトチローの辺り。
なんだか難しくて良く分からなかった。
大人になってもたぶん分からないだろうなぁとは思っていたが、まさにその通り。
銀河鉄道999をアニメで観ても良く分からなかったし、なんなら合唱コンクールでアニメ版の汽車は〜波をぬーけて〜って歌わされた意味も良く分からなかった。
しかし、分からないながらもこの劇場版には心を奪われた!
今月(2024.12)初旬、限定上映に這ってでも行きたいと思っていたのだが、残念ながら思い途絶えたので悔し泣きしながら視聴。
だってロマンをたっぷり詰め込んだ作品。
謎の美女メーテル、銀河を走るレトロな蒸気機関車999、山賊や宇宙の海賊、戦士の銃。
序盤のメーテルのシャワーシーンよりX線の方がエッチいとかビビる。
何度か配信で視聴しているが、大人の事情で鉄郎が大人になっちゃって嫌だったな。さすが音楽担当のゴダイゴ!列車999に乗り夢を叶えに行くのに未練か不安か非常に浮かない顔をしている鉄郎に希望あるポップな曲を当てるのは最高だなと思った。
母の「機械の体を…」の言葉がなければきっとそんな行動をとらなかったであろう鉄郎。
母親にクリスタルの身体にされ身体を取り戻すために働いてるクレアさん。
母親により人生めちゃくちゃなメーテル。
なんか、みんな大人により人生を強いられてるなぁ。
トチローや、クイーンエメラルダス、キャプテンハーロックなどは今作だけの視聴者には理解し難いところが不親切ではあるが、それが銀河マルチバースなのか。
しかし、惑星メーテルを滅ぼす際のハーロックとエメラルダスの笑みには興奮しかない。
美しさ、知性、母性を持ったメーテル。
鉄郎はきっと母親に似た姿のメーテルに絶対守るという強い心と母性を抱いていたのであろう。
そして恋慕の相手はクレアさん。
極限の状態から連れ出してくれたメーテルの方が鉄郎に恋心を抱いていたのだろうか。
エンディングは毎回泣くしか選択肢がなくて、やはり泣く。
窓を開け、顔を出すメーテル。
名前を叫ぶ鉄郎。
銀河へ消える999。
涙が流れるままに鼻をすすりレールを歩く鉄郎。
ひととき振り返り、そのまま走り出す。
流れるゴダイゴ。
ゴダイゴ天才かな?って毎回思うエンディング。
いや、そもそも天才集団なのだが。
最遊記とかでもお世話になったし。
作品にきちんと寄り添った曲ってすばらしい!
この作品は、古いけど時代設定や、メガロポリスや他の様々な国の特徴、音楽、そしてなにより声優さん達が素晴らしい!!
死生観とか哲学だとかなんだとか別として、作品として少年の成長を赤裸々に見せつけてくる作品としては大満足。
メーテルが美しく、鉄郎がカッコ良ければなんでもいい。大人達より逞しく成長し続ける少年鉄郎。
3部作とのことで一応全部視聴しているけど、この作品だけでいいかなって視聴し直しはしてないなぁ〜。
万感な思いはこの作品にしか抱かなかった。
やはり劇場の大スクリーンで銀河を走る999を観たかった…
もっとアニメの名作の再上映をして欲しい。
午前10時とかにもいれてくれ〜
今年の見納め作品は、懐かしさが詰まったリバイバル♪
銀河鉄道999は、子ども時代に観たアニメで、一番「生きること」について考させられた作品でした。
999が駅から走り出し、空に飛び立つ瞬間、いつもワクワクしていました。
形状が蒸気機関車を模しているところが郷愁を誘い、宇宙を疾走する999に何とも言えない感情を抱きます。
主人公の鉄郎、謎の美女メーテルのふたり旅。
星から星への旅は、鉄郎にとっても私にとっても驚きの連続で、毎回楽しみにしていました。
思えば、私が海外への憧れを強くしたのは、「銀河鉄道999」の影響でした。
映画は、鉄郎とメーテルとの出会いから、いくつかの星を巡り、最後の星での最終決戦を経て、メーテルと別れるラスト。
「肉体を手離し、機械人間になっても、永遠に生きることは幸せなのか」
そんな問いを投げかけられているような内容でした。
私は、その問いより、鉄郎がアニメより映画の方がかっこいいのが不思議でした。
私は、死よりも、老いや病気の方が怖いです。
また、自分の子や孫を見送るのは、想像するだけで心臓が握りつぶされそうに辛いです(親や自分より年上の人たちは、順番だしと粛々と見送れます)。
明日死ぬかもしれない。
明日死なないかもしれない。
そのはざまで、一生懸命考えて、決断して生きていきます(*^^*)。
久しぶりにゴダイゴを聴きながら、そんな決意を年末に改めて致しました。。
評価はともかくOPで泣ける
時が過ぎても
75点。劇場公開45周年記念 4Kリマスター版リバイバル上映
昔よく子供の時にテレビ版を再放送してたけど当時は興味がなく、1話たりとも真剣に観た事がなかった。
ここ最近、どんな話だったのか気になってましてね。
そこに、劇場公開45周年を記念した劇場版4Kリマスター版リバイバル上映。
まさか劇場で観る事になろうとは、人生って分かりません(笑)
そして、やっと分かった。
どんな話か、メーテルの事も。
こんな、いい話だとは思わなかった。
『ブレードランナー』や『ターミネーター』にも通じるモノがありますね。
伝えようとしてる事は良かったけど、最後ツッコミどころが結構あって減点しました(笑)
その1つとして、ゴダイゴは合わないと思うな…(笑)
テレビ版は、観るのがイヤになるような物悲しい歌が流れてて、そのイメージが強い。
最後に出てくる、あのキャラクターのデザインも好きじゃない…
テレビで観た時の衝撃が甦る国宝級の名作!
期間限定上映の4Kリマスター版での観賞です。
テレビの最終回の衝撃から年月が経ち、YouTubeの東映公式第1話を見てから、観賞しました。
やはり音楽が素晴らしく、気持ちが自然とのってきます。メーテル役の池田昌子さんの落ち着いていて、悲しさを感じる声が絶品です。
この物語の目的である機械の体を手に入れて、永遠の命を手に入れることは幸せなのか?という哲学的要素も盛り込まれており、
物語により深みが増します。
そして、話がひっくり返るほどの終着駅の衝撃がこのアニメの最も凄い所です。
自然と涙が流れ、しばらく余韻が残りそうです。
古き良き名作
松本零士の代表作
1970年代末の社会的価値観とテクノロジーの進化、そしてアニメ業界の成長期を象徴する作品。アニメ映画の新たな地平を切り開き、SFアニメが持つ「哲学的な奥深さ」を広く認識させる重要な役割を果たした999。松本零士という作家の戦争体験とそれに基づく深い哲学、時代背景、そしてアニメ業界の成長が結実した傑作。幼少期に太平洋戦争を経験した松本は、戦争の悲惨さや人間の命の儚さを強く意識し、それを創作の核に据えてきた。その視点から生まれた『銀河鉄道999』では、人間性の喪失や永遠の命への欲望が描かれ、戦時中の「人間の命の軽視」や物質的価値観への批判が込められている。
当時の日本社会が抱える消費社会の虚無感や技術の発展への不安も、この作品のテーマと響き合う。さらに、松本が敬愛した宮沢賢治の影響を受けた「銀河鉄道」という壮大な舞台は、戦争や復興を経て精神的な成長を求めた彼自身の人生観を反映している。
『銀河鉄道999』の成功は、単なるエンターテインメントを超え、松本が自身の体験と時代への洞察を作品に込めた結果である。この映画は、戦争を通じて見た人間の弱さと強さを背景に、技術進化の中で失われつつある「人間らしさ」を再発見するための道標を示しており、時代を超えて私たちに深い問いを投げかけ続けていく。
金田パース、青木の劇音楽、ゴダイゴの名曲もね
4Kリマスターで見ました。
もう何度見たでしょうか。
鉄郎の年齢を上げて、うまくボーイミーツガールものに仕立てたものですよね。
エンドロールで声優陣を見ていると・・・時の流れを感じますね。
もう私もいい年なので永遠の命と限りある命・・・若い頃より色々と考えますね・・・。
2時間に収めたことで突っ込みたくなる場面もありますが、すべてをラストシーンで許してしまう。
日本アニメ史に残る名シーンですよね。
とぼとぼと歩きだす鉄郎の応援するような歌詞。
そして一度振り返り空を見た後駆け出す。きっと笑顔だろうと自分は思っています。
あそこで後ろ姿だけなのがそういう想像を駆り立てて素晴らしいと感じます。
EXILEがカバーした時に映画のリメイクでもあるのかと思いました。
それぐらいこの曲は映画と密接だと思うので、なので正直カバーも意味不明だなと当時感じていました。
まさに金字塔
人生をテーマに少年の成長を描く冒険譚 宇宙を汽車が走るというシチュ...
知ってるようで、まるで知らなかった。
子どもの頃に観た以来、久し振りに4Kリマスター版で観た。 初見で観...
夢が叶いました!
厨二病の自分達の心を鷲掴みにしたメーテル再び!
ドラマ版を遥かに超えるメーテルへの恋心全開で描かれる少年から青年への成長物語。その熱い気持ちにメーテルも真っ向応えるところがいい。こうして書くとなんだか70年代に流行ったイタリア映画を彷彿させてしまい少々こっぱずかしい。ゴダイゴの超名曲、盛り上げまくる劇伴、カッコ良すぎるサブキャラ達、そして2時間に詰め込まれた壮大な物語。自身にとっては唯一無二のアニメ作品。監修・市川崑。
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