斬る(1968)のレビュー・感想・評価
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名手
Netflixにて鑑賞
飄々とした語り口調ながら、中身は存外硬派な代物。なのだが…見せ方が上手い。緩急というか、ギャップというか…軽快かつ重厚な作品だった。
おおよそ、話しの芯はブレないのだが、見せ場がふんだんに盛り込まれてる構成力は流石は名匠といった所か。その芯に絡めるサイドストーリーが魅力的ったらない。それを担うキャラ達に惹かれるのは勿論なのだが、台詞といいアングルといい…当時としては斬新だったのではないかと思う。いや、現代においてもそうそうお目にかかれるモノでもないような気もする。物語を追っかけつつも人の描写を蔑ろにしないという奇跡的なバランス感覚に溢れてる。
まるで沼にハマっていくかのように引き込まれてた。
仲代さんのキャラというか、仲代さんと高橋さんの掛け合いのせいもあるのだが、コメディ色も強いのだ。なのだけれど、そっちに傾きはしない。中村さんと神山さんがしっかり堰き止めてはいるのだけれど、ココに仲代さんが絡んできても全く違和感がない。
その違和感を抱かせない設定であり、演技の質というか色というか…締めどころをわきまえた演出というか。
いやあ…見事だった。
今の時代劇とは違うというか、昔は色んな角度からの作品があったのだなあと感慨深い。
殺陣は迫力はあったけれど、結構雑で…なのだが、コレもまたバリエーションと思えば享受はできる。
「斬る」との題名ではあるけれど、物語をダイレクトに表してる風ではないので、きっと何かに絡めたものなのだろう。
奇才・岡本喜八の世界はとても居心地が良かった。
マカロニウェスタン
圧政を繰り返してきた城代家老を斬った笈川哲太郎(中村)をはじめとする青年武士たち。どことなく『椿三十郎』の展開と似ている。
半次郎は、城代家老が斬られたことで権力を手にすることになった鮎沢多宮(神山繁)の浪人募集により雇われることとなった。鮎沢は青年武士たちをけしかけたような存在だったが、実は決断するまでは至ってない。やがて、七人は松尾新六(土屋嘉男)を江戸に立たせて殿さまに直訴し、残りは砦に立て篭もり返事を待つという作戦に出た。そこへ、反旗を翻したかのように鮎沢が砦に討っ手を放ち、集めた浪人たちをさらに斬らせる目的で向かわせた。とにかく譜代の隣藩に知られてはならない。穏便にことを済ませ、謀反人たちを死闘の末死んでしまったことにしようとしたのだ。
源太は2年前に他の藩で起こった事件を経験しており、全く同じ事件だったため、哲太郎に協力しようとする。侍なんてろくなものじゃないことを強調し、血気盛んな力持ちの半次郎を上手く利用する。登場人物では浪人たちの組長(岸田森)の悲恋や、哲太郎の婚約者(星由里子)などのエピソードもあり、ちょっと詰め込み過ぎ感もあるが、“斬る”というテーマで侍社会の窮屈で嫌な世界であることを訴えてくる。
音楽がマカロニウェスタン風でもあり、コミカルなシーン満載なのもいい。特に、力持ちのため女郎屋の柱を持ち上げた半次郎が翌朝には力が出なかったところとか・・・(笑)
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