斬る(1968)のレビュー・感想・評価
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岡本喜八を堪能するための最高の一本
軽妙と反骨という岡本喜八監督の持ち味が、おそらく最大限に発揮されたのがこの映画ではないか。先輩・黒澤明の『椿三十郎』と、プロットが双子のように似ているのは原作者が同じ山本周五郎で、設定が似通った短編小説を翻案しているからという理由が大きいが、同じ東宝のスタッフ&キャストによって、これほど似ていて、これほど違っている2作品ができてしまったことは非常に面白いし興味深い。
もっとも共通するのは、藩内の汚職に義憤を覚えた若侍たちが決起し、風来坊の浪人が助太刀するという設定。しかし、仲代達矢扮する主人公は、力むことなく、あくまでも飄々と、つかみどころがない風情で立ち回る。このモヤっとしているけれど実は切れ者という仲代達矢のキャラクターは、そのまま「パトレイバー」の後藤隊長のモデルになっているのだが、とにかく粋でカッコいい最高の仲代が見られることを保証する。
そして、小気味よい編集のテンポ、いきいち決まりまくる画のみごとさ、胸のすくような娯楽活劇に仕込まれた権力なんてくそくらえというヤンチャな反骨精神。喜八の最高傑作というと別の作品が挙がることは承知で、この映画が一番喜八らしくて、そして老若男女に勧められて、世界のどこに出しても絶対に面白い傑作だと断言したい。
【侍の愚かしさを自ら知り、侍を捨てた男を演じる仲代達矢が、飄々としながらある藩の諍いを解決する岡本喜八監督ならではの、武士の愚かしさや哀しさと、農民の逞しさを描いたマカロニウエスタン風時代活劇。】
■江戸末期。上州小此木藩では、その圧政と悪政に耐えかねた7人の武士が城代家老溝口を斬った。この機に藩政を手に入れようとするとする次席家老・鮎沢(神山繁)は、7人の武士を討つべく、すご腕の剣客・荒尾十郎太(岸田森)と半次郎(高橋悦史)たち30人の浪士を武士たちの潜む砦へと差し向ける。
一方、全てを見抜く源太(仲代達矢)は、飄々とした態度ながら、鮎沢の企みを阻止しようとする。
◆感想
・いつもの、仲代達矢の役と違い今作の源太は、どこか飄々としている。彼は過去に武士の愚かさを知り、自ら武士を捨てているからである。
・だが、彼は神山繁演じる次席家老・鮎沢の企みを見破り、それを阻止しようとする。あくまでも飄々とした態度で・・。
<今作は、岡本喜八監督ならではの、武士の愚かしさや哀しさ(岸田森演じるすご腕の剣客・荒尾十郎太がそれである。)と、農民の逞しさを描いたマカロニウエスタン風時代活劇である。
演じる役者さんの一部は、チビッ子だった頃に再再放送で観ていた、水戸黄門に出ていた人を少し覚えている。特に、当たり前だが東野英治郎と、悪い役を演じさせたら一番の神山繁かな。
あとは、岸田森さんも良い味を出している。
皆、昭和の名優である。>
まじめでも悪どくもなく
(椿三十郎+用心棒)÷2×荒野の用心棒
私的殿堂時代劇
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