劇場公開日 1977年12月17日

「文芸から路線変更したゴールデンコンビが松本清張に挑んだ意欲作」霧の旗(1977) kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0文芸から路線変更したゴールデンコンビが松本清張に挑んだ意欲作

2022年9月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

WOWOWの放送を録画にて。

山口百恵・三浦友和のゴールデンコンビ主演7作目にして、山口百恵が悪女を演じた異色作。
人気絶頂のゴールデンコンビ全12作のちょうど折り返し点に位置する。
監督の西河克己は、ゴールデンコンビ作品では最多の5作と南条豊を百恵の相手役に起用した1作を担当しており、女優山口百恵を育てたような存在だ。本作が百恵との最後の作品となる。

松本清張は多くの悪女を描いているが、本作の桐子は復讐が目的で、そこに至る背景が悲哀に満ちていて同情を誘うキャラクターだ。
先に倍賞千恵子主演、山田洋次監督、橋本忍脚本で映画化されている。(未観賞)
三國連太郎は栗原小巻主演のフジテレビ版で同じ役を演じている。(栗原小巻の美しさたるや!)

本作は、三浦友和演じる雑誌記者安部を、山口百恵演じる主人公桐子に恋愛感情を抱く青年へ脚色しているのが特徴。ゴールデンコンビ映画ならではだ。
原作は桐子と弁護士大塚欽三が主人公で、桐子の復讐に堕ちていく大塚の役に実力派俳優を配して大塚役を主演としたテレビドラマが多い。

当時のゴールデンコンビ作は飛ぶ鳥を落とす勢いで、テレビドラマの「赤いシリーズ」も並行して高視聴率だった。
本作で大塚欽三弁護士を演じた三國連太郎は、ドラマ「赤い運命」で百恵の入れ替わった父親を演じていた(百恵の相手役は友和ではなく南条豊)。
当時(公開から相応に期間を空けた後かもしれないが)、百恵による手記で、三國連太郎との絡みのシーンで緊張していたが、三國の手が自分の胸を包み込んだ時にその緊張が解けた…といった内容を記していたのを読んで、なんだか興奮を覚えた記憶がある。
自分は桜田淳子派だったが、トレンドとして百恵は押さえておかなければならないスターだった。
この映画に出演した時の百恵は17〜18歳のはずだが、物語上最初の登場時点で20歳の設定だ。正直、20歳よりも上に見えたし、物語が展開する数年後の姿に違和感はなかった。

悪い言い方をすれば、アイドル映画だから原作が持つ復讐劇の巧妙さを描きあげることは主目的にない映画だ。
だが、人気絶頂のアイドル山口百恵が自らの意思で汚れ役にチャレンジし、その存在感をアピールした作品として意義深い。
三浦友和も、冴えない雑誌記者でヒーローになれず空回りするという役を百恵相手に引き受けた点で、ゴールデンコンビとしても異例の作品だったと思う。

kazz