「ご存知サブちゃんの大ヒット曲を、本人主演で」兄弟仁義 逆縁の盃 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
ご存知サブちゃんの大ヒット曲を、本人主演で
ご存知北島三郎の大ヒット曲をモチーフに、本人主演で贈るヤクザ映画。
先ず導入の入り方がとても良い。
一宿一飯の恩義に預かった一匹狼の身。出入りで大立ち回りをした後に見た光景は、母親と息子が楽しく花火に興じる姿。
函館はにしんヤクザ、右の眉間の下には2円30銭の傷を持つ《追分の松》が、我らがサブちゃん。
先の光景から母親を探す旅先。知り合ったのは自分と似た境遇を持つ凄腕のヤクザ。同じ三郎繋がり…って訳でも無いのだろうが(笑)若山富三郎。
若山はこの土地で企業と結託し、悪行を繰り返すヤクザ“山守”…じゃ無かった岩井組の組長金子信雄の義兄弟分。
山守…じゃ無い金子が若山に刀を差し出す。それだけで全てを理解させる場面はゾクゾクっとさせる。
公害を撒き散らす企業に苦しめられる住民側に周り、交渉に乗り出している巽組の組長には大木実。その下に位置するのが菅原文太。
義兄弟の頼みを聞く若山と、その為に巽組と縁が出来るサブちゃん。
お互い袂を分かつ間柄に…。
嫌な噂を確かめる為に、知り合った酒場の娘に頼み若山と会う。
しかし、この酒場の女将さんこそが山守…だから違うって!金子の妻。
そして更に…。演じているのが《母物》と言えば右に出る人が居ない三益愛子。となれば、そりゃもう貴方!そうゆう事です。
巽の親分の葬式に乗り込む金子。対峙する文太。
ここに山守VS広能の“代理戦争”が勃発した(笑)
後年の遊び心は一切無し。抑制された画面空間に広がる、義理と人情の世界。
立場は違えども、お互いに母親を思う気持ちを示す友情。
自分は間に合わなかった悔しさを味あわせない為に、若山はサブちゃんに真相を話す。
初めて親子として話す会話。
盃を割る若山に、盃を返す文太。
「兄弟仁義」を背景にいざ赴くサブちゃんに文太。
ヤクザ映画のルーティーンを生かした母物映画としての側面も併せ持ち、勿論サブちゃんは得意の喉で「松前追分」を一曲披露する。
これは秀作ですね。