「主人公の派手な活躍をピックアップしてないところが良い」機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5主人公の派手な活躍をピックアップしてないところが良い

2024年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

一応、OVAシリーズの一部のエピソードを切り取った総集編のようなものだが、ピックアップしたエピソードがいぶし銀だ。ド派手に主人公がモビルスーツに乗って活躍するシーンはほとんどなくて、地道に村に通信ケーブルを引っ張っていたりとか、軍法会議を受けていたりとか、すごく地味なシーンが多い(ビームサーベルでお湯を沸かすシーンは派手なシーンかな?)。しかし、いずれもこの08MS小隊シリーズの中では見せ場のシーンだ。
とにかく、このシリーズの良さは泥臭く、リアルな戦闘描写にある。ニュータイプも出てこない。全体的にベトナム戦争を参考にしている部分が多いと思うが、この泥臭さは、富野由悠季らしさよりもサンライズの中の高橋良輔のラインのスタッフが活躍しているからなんだろう。
ミラーズ・リポートは主人公がスパイか調査する人物を通して、彼の軌跡を見直し、それを通して戦うことの意味を描こうという試み。ゲリラの村に食糧を分けてもらいに来たジオン軍との対峙は、争いの虚しさの描写として本当に秀逸で、主人公の葛藤を中心に据えれば、ここがピックアップされるのは適切。トップ少尉は人道的な人物だが殺される恐怖に怯えた時の表情は本当に秀逸で、戦場は敵も味方もそうでない者も恐ろしいものに変えてしまうんだなと納得させられてしまう。Netflix『復讐のレクイエム』は、本作の影響を受けているが、こういう泥臭く戦場のリアルを追求するガンダムを日本製のアニメでもまた作ってほしい。

杉本穂高