「率直に本作(第1作)だけでも作品としては充分成立、名作ですね。 改めて45年以上も前に、これほどとてつもなく凄い作品に出合うことができて感謝です。」機動戦士ガンダムI 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
率直に本作(第1作)だけでも作品としては充分成立、名作ですね。 改めて45年以上も前に、これほどとてつもなく凄い作品に出合うことができて感謝です。
新作アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の先行上映および地上波開始で再評価される「機動戦士ガンダム」の劇場版三部作が4月27日(日)新文芸坐さんにて一挙上映、40数年ぶりのスクリーン鑑賞。
『機動戦士ガンダムⅠ』(1981/137分)
テレビ版第1話から第14話前半までを再編集した本作、公開日は1981年3月の春休みシーズン、当時小学1年でしたね。
79年4月土曜17:30からのスタートした初回放送は18:00からの戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』を観るために何となく流し見程度、『ガンプラ』もまだ市場には10種類程度しか投入されておらずブーム夜明け前、本作品公開後~夏公開『哀・戦士』の間に地上波再放送も相まって一気にブームが爆発した記憶があります。再放送も平日夕方17時半にも関わらず30%近い視聴率、公園には誰一人子どもたちがいなくなりました。
本作公開時は「プラモデル」よりも駄菓子屋さんで販売していた「消しゴム」や「ミニカード」が人気でコレクションしていましたが、たまたま父親が『宇宙戦艦ヤマト』好きでブーム前夜に近所の子どもが誰も未鑑賞のなか、自分だけ劇場体験できたのは、実にラッキーでしたね。
正直、子どもの頃はモビルスーツの登場も「ザク」ぐらい、アムロも当時のロボットアニメの主人公らしくなく常に陰鬱で三部作のなかでも評価が低かったのですが、今回見直すと、アムロが民間人から戦乱と大人たちの勝手な事情から軍の一員として戦いに巻き込まれるなかで、時に大人たちに抗い、苦悩と葛藤、上官に殴られ、仲間たちに励まされながら、未熟な青年が徐々に大人(戦士)に成長する戦火の人間ドラマ、そしてザビ家に対するシャアの復讐劇も大河ドラマのようで惹き込まれるストーリーですね。
大気圏突入ギリギリでのリアルな戦闘や、戦闘機(ドップ)、大型戦車(マゼラアタック)、偵察機(ルッグン)、爆撃機(ガウ)などの兵器一つひとつも描写が丁寧で、高価な兵器として安易にモビルスーツを乱発登場させない辺りも実によく練られており敬服します。
声優ではアムロの母カマリア・レイを劇場版では倍賞千恵子がアテレコ。当時は「寅さんの妹さくらが何故」疑問でしたが、心がすれ違った母と子の邂逅と別離を見事に演じておりました。
主題歌は作詞・作曲谷村新司氏、歌唱はやしきたかじん氏の『砂の十字架』。
こちらも第2作『哀 戦士』に比べると地味な印象でしたが、改めて聞き直すと、やしきたかじん氏の伸びやかなボーカルもラストにマッチしており数十年ぶりの再評価です。
率直に本作(第1作)だけでも作品としては充分成立、名作ですね。
改めて45年以上も前に、これほどとてつもなく凄い作品に出合うことができて感謝です。