「逆に時代が追いついたので、一層魅力が増しましたね!」機動警察パトレイバー the Movie 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
逆に時代が追いついたので、一層魅力が増しましたね!
今年で公開35周年を迎える『機動警察パトレイバー the Movie』(1989)リバイバル上映中。2025年夏以降再開発が予定されている丸の内TOEIさんの大スクリーンで鑑賞。
『機動警察パトレイバー the Movie』(1989)
ヘッドギアと称する原案および漫画をゆうきまさみ氏、メカニックデザイン・出渕裕氏、キャラクターデザイン・高田明美氏、脚本・伊藤和典氏、監督・押井守氏からなる豪華なメンバーが集まり、1988年OVA(のちにTVシリーズ)、週刊少年サンデーでの連載、プラモデル含めたマーチャンダイジングとメディアミックス展開。
リアルロボットアニメの決定打、ストーリー設定の面白さに完全にハマりましたね。
そして1989年夏に満を持して劇場版が公開。あまりの出来の良さに劇場で腰を抜かしたことを今でも覚えてます。
物語の設定は1999年。
作業用レイバー(ロボット)が普及、その犯罪が多発する近未来に警察側も対抗するためレイバー中隊を創設するのが大筋のプロット。
本作ではレイバーの新型OS書き換え時にコンピューターウィルスを感染、首都圏の建造物から発する人には聞こえない低周波音がトリガーとなって首都圏に配備されている数千のレイバーが暴走、それを食い止めるため湾岸(木更津)地区で最大の建造物(通称:方舟)を超大型台風直撃前に取り壊しに向かうというストーリー。
公開当時(1989)は身の回りにはパソコンはおろかワープロさえもまだ普及しておらず、あまつさえ「OS」という言葉さえも一般化されていない時代、とにかくパソコンの専門用語が飛び交って難解(それでも押井監督作品のなかでは比較的平易ですが)でしたが、何とか理解しようと背伸び、もがきましたね。
木更津のバビロンプロジェクトは8年後の1997年に開通した東京湾アクアラインを想起、アクアラインで堤防を作り、内側を埋め立てて土地問題一気に解決するなんて、本当にありそうなリアリティのある設定でしたね。
本作のもう一つの主役は当時バブル経済で一気に開発が進んだ首都・東京ですね。
近影の下町の瓦屋根民家と遠景の新たな超高層ビル建築の強い対比とコントラストが神々しく、実際に渋谷並木橋からの眺める渋谷川の実景が採用されており、ノスタルジーを掻き立てられます。
その後『踊る大捜査線』などにも影響を与えた特車二課の後藤喜一警部補(カミソリ後藤)をはじめとする登場キャラクター設定もアニメ版『うる星やつら』の延長線上のようで各々魅力的でチームとしてのバランスもとれており、レイバーのデザインやアクションもリアリティを追求してリアルロボットアニメの究極のかたち。
そして忘れてはならないのは川井憲次氏の音楽・劇伴。
誰でも一度は聴いたことのある躍動感の名曲です。
久々に大スクリーンで観ましたが、35年前の作品とは思えないほど全く古さを感じさせず、逆に時代が追いついたので、一層魅力が増しましたね。
今回観劇した「丸の内TOEI」も25年夏に再開発のため閉館予定、本作品のストーリーにも通じる部分があるので足を運びましたが、ここでも様々な作品を鑑賞したので寂しいですね。