「シズル感溢れるサウンドの再現が印象的、30年の時を経ても色褪せない異色の名作」機動警察パトレイバー the Movie よねさんの映画レビュー(感想・評価)
シズル感溢れるサウンドの再現が印象的、30年の時を経ても色褪せない異色の名作
1999年、人型作業ロボットの工事用レイバーが建設作業に従事している大規模開発計画“バビロン・プロジェクト”が進行中の東京湾。富士山麓で自衛隊のレイバー試作機が無人で暴走、都心部でも工事用レイバーの暴走が多発したことから警視庁特車二課が捜査を開始。暴走事故の発生がレイバーに新規導入されたばかりのオペレーションシステム、HOSが怪しいと睨んだ篠原遊馬だったが、HOSの開発者だった帆場はバビロン・プロジェクトの中心施設“方舟”から投身自殺を図っていたことを知る。
そもそもコミックもOVAも知らないのですがそれでも全然鑑賞に支障がないくらい丁寧かつ簡潔に登場人物を描いていてストーリーにグッと引き込まれます。ロボットアニメなのに戦闘シーン自体は相当控え目で、尺の大半を占めるのが犯人が故意に遺したエビデンスを淡々と拾い集める捜査劇。今の時点で観てもいかにも押井守的な演出、爽快感と絶望感を同時に提示する予定調和を拒絶した展開が『シン・ゴジラ』に大きな影響を与えたであろうことがよく解ります。公開当時にはまだまだ色濃く残っていたであろう昭和の残り香がしっかり刻まれているのも印象的で、ストーリーとは全く関係なくノスタルジーが掻き立てられます。
今回の再上映は4DXというのがウリですが、そちらよりも先にハートを鷲掴みにされたのは音響効果。昔VHSで鑑賞した時のようなこもった感じが一掃されて80‘s特有のシズル感溢れるシンセサウンドが非常にクリアになっていてタイムスリップしたような感覚をまず耳から味わえました。もちろん4DXの効果は絶妙で、ストーリーへの没入感をスムーズに増幅してくれます。ただ雨のシーンが多いので肌の露出が多い服装で鑑賞すると肌寒く感じてしまうかも。雨合羽着用でもいいくらい水を浴びますので予め覚悟が必要。水の噴射は各自座席でオフに出来ますがそこはしっかり堪能したいところ、メガネの着用は出来れば避けて長袖のシャツを羽織っておくといいでしょう。ドリンクを持ち込む際には上映前に3割くらいは飲んでおかないと座席の振動で溢れかねませんので要注意。私はホットコーヒーのトールサイズを持ち込みましたが、冒頭で膝にブチ撒けてしまいました。
結果としては大満足。この勢いで3作目の『WXIII 機動警察パトレイバー』まで4DX化してもらいたいです。