雁の寺のレビュー・感想・評価
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もっと官能の危うさ、観たかった!
オープニング!メチャクチャ、カッコよかったけどなあ… 雅な日本美術の美しさと若尾文子の妖しい色気でもって、メロメロ&クラクラさせてくれるのかと勝手に期待しちゃったよ。 あの雁鳥が描かれた襖絵、もっと本編の中でもフィーチャーして欲しかったなあ。 勝手に期待していたといえば、官能的な愛欲ファムファタールものと思っていたが… 底なし沼の愛欲に溺れることなどなく… そもそも官能の危うさ自体も特になく… というか、あの程度の好色坊主では、そこまでの業の深さからは程遠く… う〜ん… 全然、物足りんわ! 何が禁断の愛欲じゃ。テキトーな宣伝コピー書きやがって。全くタブー感など無かったぞ! まあ、当時はポルノ映画でさえ、諸々と制限はきつかったとは思うが、そこは、ヒッチコックなんかも参考に色々と工夫して欲しかった。 若尾文子だったから、なんだかんだで最後まで観れたようなもんだ。 復讐劇のプロットの方も全く期待して無かったんで、あの詰めの甘い展開でも、ダメ出しする気にもなれなかった。 ラストの突然の喜劇風の展開も、なんだかなあ… 監督自身の意図?それとも大映からの要求? あと昔のゴニョゴニョした言い回しの関西弁、何を言っとるのか?よく聞き取れなかったが、関西人なら、わかるのかな? 出来れば、英語版の字幕で観たかったよ。 あればだけど。
若尾文子の真骨頂
若尾文子映画祭で観賞。 全編、計算し尽くされた構図による、映画芸術の粋。 若尾文子の色香の極み。 徹底したローアングル、かと思えば俯瞰、深い奥行きに大胆な人物配置、そして超アップと、どこを切っても見事な構図。 若尾文子の和服姿は無敵。 モノクロ画面に浮かび上がる白い襟足と、太腿のチラリズム。 僧侶が女を囲うことが公然の秘密なのには驚く。 見るからに醜悪な色に惑う生臭坊主の、その庇護を受け入れて生きねばならない女の憐れと強かさ。 若尾文子の演技は決して同情を買うものではなく、運命に抗わず生きる強さがある。 男を狂わせる女の姿は、若尾文子の真骨頂だ。 小僧を追い詰めるのは、生臭坊主の方ではなく女だったのかもしれない。 ゆっくりしているようで、無駄がない物語進行。前半の謎めいた小僧の行動が布石となる。 そして、後半はねっとりとした緊迫感に包まれた秀逸なサスペンス。 エンディングのカラー部分は、なんだかなぁ。
少年僧のまなざし 若尾文子のえりあし
1962年川島雄三監督。観る前にググって調べると、水上勉の直木賞受賞小説が原作。自伝的作品で、幼少時に目撃した禅寺の堕落した暮らしぶりを元にしている。映画化にあたり仏教界からの反発が強く公開が難航したとある。これを見て俄然期待が高まった。 文芸サスペンスとでもいうべき内容。堕落住職に理不尽に虐げられる少年僧が自分の言葉で喋り出すその激しさ。全編凝った構図。若尾文子の艶やかさ。特筆すべきは中盤以降の張り詰めた緊張感。こんなにずっと続く緊張感の映画は滅多に出会えない。最後の最後はちょっとどうかと思ったがそこも川島雄三映画と言ったところか。 十二分に堪能しました。
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