「昭和シリーズ屈指の見応え」大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和シリーズ屈指の見応え
サンテレビ「アフタヌーンシアター」で鑑賞。
本作の大きな特徴は、子供が一切登場しないことであろう。ガメラが子供を助けると云った描写も無い。本作のガメラは徹頭徹尾、敵の立ち位置だ。
悪役が殺人を犯したり、主人公とヒロインがいい雰囲気になったりと云うアダルトな作風に子供が退屈したため、次から子供向けに戻したそうである。
大人になってから思い返すと、ドラマも特撮も、昭和シリーズの中でいちばん見応えがあるように思う。上手くバランスが取れていて、テンポも良い。
当時の大映スター、本郷功次郎氏が出演していてドラマに締まりが感じられる(本人は当初、怪獣映画に出演するのがとても嫌だったとのこと)。
特撮では、神戸や大阪を蹂躙するバルゴンの描写が素晴らしい。昭和シリーズ後半では予算の都合で無くなってしまう都市破壊を存分に楽しめた。
なぎ倒されるポートタワーや氷漬けにされてしまう大阪城など、関西出身の私に馴染みの深い建物が被害に遭うシーンはなんだかウキウキした。
バルゴンの舌を伸ばして放つ冷凍液や虹色殺人光線など、技もユニークだ。目が大きくてかわいらしいのに凶暴な性格なのもギャップがあって良い。
昭和シリーズでいちばんと言って良いほど自衛隊が怪獣撃滅作戦を頑張っているのも特徴だ。ニューギニア先住民のカレンが齎したヒントを元に様々な作戦を展開する。ダイヤモンド作戦やバックミラー作戦など、作戦の名称がユーモラスで面白い。
ガメラが、一度は敵に敗北するもリベンジマッチで勝利する図式が本作で確立している。大阪城で氷漬けにされるも琵琶湖で再戦し、勝利をおさめるのだ。バルゴンの断末魔が印象に残る。
人の欲望の醜さが描かれ、因果応報な結末を迎える悪人に子供ながらに衝撃を受けたことを覚えている。こんな大人にはならないぞと心に決めたが、果たしてなっていないか、とても心配である。
[追記(2020/05/24)]
偶然「黒部の太陽」を観た直後に鑑賞したため、黒部ダムが破壊されるシーンに心が痛んだ。
どれだけの犠牲の果てに出来たと思っているのだと、ダムに感情移入してガメラに怒りを覚えた。
[追記(2025/11/09)]
何故、ガメラはバルゴンと戦ったのか。その理由が全く明確でないことに気づかされた。動物としての本能から来る行動だったのだろうか。
昭和シリーズのガメラは子供を助けるために敵と戦う存在と云う印象があるが、本作には子供が登場しないため、その動機も考えられない。
バルゴンと戦わないと始まらないので、ご都合主義に目を瞑らないといけないのは分かるが、なんらかの理由づけは必要ではないかなと思う。
[鑑賞記録]
2001/??/??:サンテレビ「アフタヌーンシアター」
2020/05/24:Amazon Prime Video
2025/11/09:BS12(4Kデジタル修復版)
*初投稿(2018/10/11)
*再投稿(2020/05/25)
*修正(2025/11/09)

